2017年7月20日、企業会計基準委員会が売上高計上に関する新たな会計基準の公開草案を公表した(企業会計基準委員会「収益認識に関する会計基準(案)」等の公表)。これは、IFRS(国際会計基準)と米国会計基準が共同で開発した新たな売上高計上基準を踏まえて、日本基準も基本的にそれらに合わせることを目的としたものだ。

 IFRSは2018年1月1日以降開始の事業年度から、米国基準は2017年12月15日以降開始の事業年度から、新しい売上高計上基準を適用する。日本基準は2021年4月1日以降開始の事業年度に適用することを目指している。

 日本における従来の売上高計上基準は商慣行に委ねられているに過ぎず、包括的な会計基準は存在しなかった。それだけに、この会計基準は今までの日本基準にはなかった会計基準と言える。あくまでも公開草案の段階ではあるが、今回は現段階で見えている製造業に関連の高い部分について解説する。

「収益認識」の意味を確認すると

 企業会計基準委員会が公開草案として公表した会計基準は「収益認識に関する会計基準」と言われる。この言い方は、IFRSでも使われている表現だ。基本的な話として、まず「収益認識」という言葉の意味から確認しておこう。

 一般用語としての「収益」は費用を控除した残り、すなわち利益の意味で使われることが多い。実際、新聞やニュースなどでもその意味で使われていることが多い。しかし、会計理論上の正式な意味はそうではない。

 会計理論上の収益とは、損益計算書におけるプラスの要素の総称だ。日本基準を前提にすれば、売上高、営業外収益、特別利益に計上されるものすべてを指す。これに対して「費用」は、損益計算書におけるマイナスの要素の総称である。そして収益から費用を引いたものが利益となる。利益はネット概念であるが、会計理論上の収益はまだ何も引かれていないグロス概念である。

 収益の中で最も金額的に大きいのは、言うまでもなく売上高だ。このため、売上高の意味で収益という言葉が使われることもある。本来、IFRSの原語では収益はincome、売上高(=本業による収益)はrevenueという言葉で使い分けられている。それなのに、日本語ではいずれに対しても「収益」という言葉をあてている。特に、IFRSの日本語訳ではそのような使われ方をすることが多い。個人的には感心しないが、なぜかそのような日本語があてられているからしようがない。

 一方、「認識」というのも立派な会計用語で、これは「帳簿に計上すること」を意味する。つまり、収益=売上高、認識=計上なので、草案にある「収益認識基準」は「売上⾼計上基準」を意味する。