ソフトバンクグループの代表取締役副社長だったニケシュ・アローラ氏が同社を退任することとなった(代表取締役の異動(退任)に関するお知らせ:PDF)。アローラ氏は孫正義氏が自身の後継者候補として2014年に米Google社から引き抜いた人物だ。

 アローラ氏の退任が明るみに出たのは株主総会前日の2016年6月21日。その前日となる6月20日には、アローラ氏の実績や適性を疑問視する投資家グループの申し立てに対して、ソフトバンク取締役会の独立役員で構成される特別調査委員会が「何の問題もない」と回答したばかりだった(投資家グループへの特別調査委員会の回答:PDF)。それが一転、翌日になって突然の退任発表となった。

 退任の理由は、6月22日の株主総会での孫氏の「欲が出た」という一言に尽きるのだろうが、一部ではアローラ氏が自ら泥舟から降りたとの観測もある。泥舟と言われる根拠の1つは、長期と短期合わせて11兆円にも上る有利子負債だ。

 11兆円という絶対額には確かに驚くが、それだけで退任するほどアローラ氏は素人経営者ではないだろう。事の真相はアローラ氏本人しか知る由はないが、2016年3月期の決算が発表されたばかりの今、一部で「泥舟」と言われるソフトバンクグループの財務状況を見てみたい。

 比較対象は、国内通信分野でしのぎを削っているNTTとKDDIとしよう。ただ、異彩を放つソフトバンクを日本の伝統的な大企業とだけ比較してもしようがない気もするので、さらに米Apple社も比較対象に加えることにしよう。なお、比較はすべて連結ベースとする。また、日本基準、IFRS、米国基準が入り乱れているので、当期純利益、純資産とも非支配株主を含む全株主帰属分で統一する。