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会計視点で見る話題の業界動向

内部監査の指摘をもみ消した富士ゼロックスの売上至上主義

  • 金子 智朗=ブライトワイズコンサルティング合同会社代表
  • 2017/07/03 05:00
  • 1/4ページ

 富士フイルムホールディングスは2017年6月12日、子会社である富士ゼロックスによる不正会計処理による損失額が累計375億円に上ることを発表した(「当社連結子会社に関する不適切な会計処理による影響額に関するお知らせ」:PDF)。最初に不正が発覚したのはニュージーランドの販売会社だったが、その後オーストラリアの販売会社でも同様の不正が発覚。その結果、当初220億円と発表された損失累計額が375億円に膨らむこととなった。

 結果的には、富士フイルムホールディングス全体の業績に与える影響は大きくなかった。延期していた2017年3月期の決算発表も、第三者委員会からの調査報告書の公表と併せて6月12日に実施。定時株主総会も事業年度の翌日から3カ月以内となる6月29日に無事開催された。

 しかし、内容的には大問題だ。他の会社も他山の石とすべき事案である。今回は、本件の一体何が問題だったのか。第三者委員会報告書の内容を基に解説する(第三者委員会調査報告書要約版:PDF)。

売買取引として処理されるファイナンス・リース

 本件で問題になったのは、富士ゼロックスにおけるリース取引に関する会計処理だ。富士ゼロックスといえば、同社のコピー機やプリンター、あるいはそれらを一体化した複合機を使っている会社も多いだろう。その多くがリースであり、富士ゼロックスにとってリース取引は売上の根幹をなすといってよい。

 ところで、リース取引とは何だろうか。「レンタルと何が違うの?」と質問されることも多いので、まずはリースについて解説しておこう。

 リース取引の基本的な流れは図1の通りだ。

図1●リース取引の基本的な流れ
作成:ブライトワイズコンサルティング合同会社

 例えば建物をリースする場合、まずはユーザーとサプライヤーの間で欲しい建物を選定する(図1の(1))。そこで選定した建物を購入するのは、ユーザーではなくリース会社だ(図1の(2))。リース会社は、購入した建物の使用収益権(それを自由に使って収益を得る権利)をユーザーに与え、ユーザーはその対価として一定期間にわたってリース料を支払う(図1の(3))。これらの取引によって、三者三様のメリットが得られるわけだ。

 富士ゼロックスのニュージーランド拠点の場合、現地の販売会社Fuji Xerox (Sales) Pty. Limitedがサプライヤーであり、ファイナンス会社であるFuji Xerox Finance Limitedがリース会社に相当する。ここで会計上の問題になるのが、リース会社の位置付けだ。

 まず、リース会社は「建物を所有し、それを貸し出す大家さん」であるという見方がある。その場合、ユーザーは家賃と同じように、支払時にリース料の全額を「費用」として処理するだけである。

 もう1つの見方は、リース会社は「ユーザーが建物を取得する資金を貸してくれた金融機関」というものである。すなわち、リース会社がサプライヤーに支払った代金は、ユーザーに代わってサプライヤーに支払ったものであり、実はユーザーに貸し付けたものであるという見方だ。この場合、ユーザーがリース会社に支払うリース料は、借入金の元本と利息を合せたローンの返済に相当する。

 前者のように、リース会社を大家さんと考えるリース取引を「オペレーティング・リース」という。いわゆる「レンタル」はこれに相当する。一方、後者のようにリース会社を金融機関と考えるリース取引を「ファイナンス・リース」という。ファイナンス・リースは「ユーザーはリース会社から資金を借りて、自ら建物を購入した」と見なすので、売買取引として会計処理される。つまり、リース開始時点で、リース会社は物件を売却した売上高の全額を計上し、ユーザーはリース物件を資産として計上するのである。

 法形式的にはリース取引はあくまでも賃貸借取引である。所有権はリース会社にある。それにも関わらず、ファイナンス・リースでは経済的実態を優先して売買取引として処理してしまう。ここにリース会計の最大の特徴がある。

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