経営再建中の東芝は2017年4月24日、社会インフラやエネルギーなどの主要5事業(うち4事業は社内カンパニー)を4つの会社に分社化することを決定したと発表した(関連記事「東芝が事業部門を4つの分社へ、本体は持ち株会社化」)。これに伴い、合計約2万人を新会社に転籍させるようだ。

 今回の分社化とは別に、東芝では2017年3月30日の臨時株主総会でメモリー事業の分社化が承認されたばかりだ。今回は相次ぐ分社化の狙いは何か、そして、狙い通りの効果は得られるのどうかを探ってみたい。

債務超過だと大規模工事を受注できない

 先日のメモリー事業の分社化も今回の4社分社化も、共通しているのは債務超過に関係していることだ。ただし、狙いは異なる。

 メモリー事業の分社化で達成したいことは上場廃止の回避だ。従って、狙いは連結ベースで債務超過を解消することにある。メモリー事業の分社化は第1ステップに過ぎず、第2ステップとして分社化後の会社の株式の一定程度を東芝グループ外の第三者に売却してキャッシュを得ることがゴールとなる(関連記事「望ましい株主資本と保有比率から東芝メモリ評価額を予想する」)。

 これに対して、今回の4社分社化は東芝グループ全体の債務超過の解消を狙ったものではない。債務超過を解消できなかった場合に備えて、4社分社化によって1兆円規模の売上高を失うことを避けようとしているのである。

 債務超過が1兆円規模の売上高減少につながる理屈は次の通りだ。建設業法では、4000万円以上の下請け契約を必要とする大規模工事を手がけるには特定建設業の許可が必要であり、自己資本額4000万円以上などの財務的な条件が課される。債務超過になれば、当然にこの条件を満たせなくなる。そうなると、特定建設業の許可が更新できなくなり、発電やビル設備など大規模工事を受注できなくなる。

 東芝の許可が次に更新される時期は2017年12月だ。それまでに債務超過を解消できなければ、特定建設業による巨額の売上高を失うことになる。報道によると過去の受注実績から考えて、その額は1兆円にも達するという。