いくつかのメディアの報道によると、味の素が今春の労使交渉の結果、従業員の基本給は据え置いたまま、所定労働時間を短縮することで合意するそうだ。実施は2017年4月からのようである。具体的には、1日7時間35分の所定労働時間を7時間15分にする。1日20分の短縮により、年間では労働時間は80時間の削減となる。

 労使交渉と言えば、一般的には賃上げ交渉と相場が決まっている。最近は政府も含めてやたらとベア(ベースアップ)に関心が集まっていたが、賃金は上げずに所定労働時間を短縮するというのは新しい流れだ。

 味の素はここのところ2年連続でベアを実施してきたが、今春の労使交渉では労働組合がベアではなく労働時間の短縮を求めていたようだ。労働組合の要求の狙いはワークライフバランスの推進であり、経営側も多様な人材が活躍できる働き方改革の一環として要求に応えたようだ。所定労働時間は短縮されるが基本給は変わらないため、経営側は「実質的に月1万4000円以上のベアに相当する」と説明している。

 本件に関しては、おおむね好意的な意見が多いようだ。筆者も労働時間を短縮することそれ自体はいいと思うのだが、基本的な考え方の部分でツッコミを入れたいところが何点かある。