最近、日本マクドナルドに関してちょっと気になる記事を目にした。同社の売上高が売上原価を下回っていることを問題視した日本経済新聞2016年2月22日付朝刊の『「客離れ」に隠れた問題点』である。

 確かに、日本マクドナルドの2015年12月期の直営店舗売上高は1425億円なのに、売上原価はそれを上回る1431億円になっている。売上高に対する売上原価の比率である原価率は100.4%であり、記事が指摘するように売上高が売上原価を下回っている(図1)。いわゆる原価割れの状態だ。

図1●日本マクドナルド直営店舗の売上原価の内訳
図1●日本マクドナルド直営店舗の売上原価の内訳
出典:日本マクドナルド平成27年12月期 決算短信

 記事は「原価よりも安い値段で商品を売ったら、赤字となるのは明白」であり、「商売の基本を踏み外しているのではないか」と指摘する。「売るだけ赤字が膨らむ負け戦だ」とも言っている。記事によれば、日本マクドナルドの原価率は元々高めだったが、それが2012年12月期頃から急上昇したという。そして、「原価以上の価格を設定するのが難しいのなら、消費者が認める価値の創造力がないことになる」と、プライシングに問題があるという論調になっている。

 「消費者が認める価値の創造力がない」という主張はその通りだ。だが、そこに至る考え方はちょっと違うと思うのである。日本マクドナルドは日経テクノロジーオンラインが主に扱う技術系企業からは少し外れるが、製造業としての性格を持っている。製造業の管理会計で重要な売上原価を考える良い事例になると思うので、以下、筆者の考えを述べさせてもらう。