2018年1月20日付の日本経済新聞朝刊は、新日鉄住金が2019年3月期から国際会計基準(IFRS)を採用すると報じた。同記事によれば、今後海外事業を伸ばしていくことを踏まえて、海外投資家が同業他社と財務情報を比較しやすくすることが狙いとのことだ。現時点でも新日鉄住金の財務担当者は海外投資家とのミーティングで、「もっと他国の鉄鋼大手と横比較できる情報を充実してほしい」という要請を多く受けるようになっているという。

 ただ、本件に関して新日鉄住金からのプレスリリースは2018年1月29日現在、出ていない。日本経済新聞以外の報道もないようなので、おそらく日本経済新聞の独自取材によるものなのだろう。現時点でどこまで真に受けていいのか分からないが、仮に本当だとすると非常に興味深いニュースだ。日本における会計基準の方向性にも影響を与えるかもしれない。焦点は、“日本版IFRS”と言われる修正国際基準(JMIS)の行く末だ。

報道が触れていない大きなポイント

 実は、日本経済新聞は2016年3月にも同じような記事を載せている。そこには「新日鉄住金は2019年までに会計基準を変更する方針だ。現在の日本基準から、国際会計基準(IFRS)か、IFRSと中身はほぼ同じだが「のれん」の定期償却を認める修正国際基準(JMIS)に変える。会計基準の見直しで海外企業との提携戦略を進めやすくする狙いがある」とある。

 このときの記事も情報ソースを明記していないので、どこまでが真実でどこからが憶測かは分からない。だが、記事の通りだとすると、新日鉄住金は少なくとも2年前から会計基準の変更を検討していて、今回いよいよその時期が来たということになる。

 ただ、2016年3月時点の報道と今回の報道とでは大きく異なる点がある。2016年3月時点では「国際会計基準(IFRS)か修正国際基準(JMIS)のどちらかにすることを検討」だった。それが、2018年1月20日の記事では「国際会計基準(IFRS)を採用する」と報じられている。つまり、修正国際基準(JMIS)はやめて、国際会計基準(IFRS)を採用するということだ。

 1月20日の記事だけを見ると、単に「IFRSを採用する企業がまた1社増えた」というだけのニュースに思える。だが、私には新日鉄住金がIFRSを採用したことよりも、修正国際基準(JMIS)を採用しなかったことの方が大きなニュースなのだ。