口火とは、爆薬やガス器具などに点火する時に使う、最初の火のことである。口と言う言葉には物事の初めの部分という意味もあるから、まさに最初の火である。

 転じて口火を切るというのは、物事を他に先駆けて行うことや、きっかけを作ることだったり、会議の席で最初に意見を言ったりすることだ。

 いずれも、口火によって火が付いた後は、本格的に燃えるのだから、口火を切る者は、ある意味で責任があるといえる。口火の付け方が悪かったり、変な方向を示唆するような口火の切り方のために、せっかく付いた火なのに消えてしまったり、異常に燃え上がって収拾がつかなくなってしまうこともあるからだ。

 だから、重要な会議の席で「何かご意見はありませんか」と言われても、真っ先に手を挙げるのをためらうのは、この責任を感じるからに違いない。

 こうしてみると、口火を切るのは大変だが、口火がないと本格的な議論は始まらないし、有意義な結果もあるはずはない。

 実は、何かを始めるときに大切な口火、それは開発においても大事なことではあるまいか。特に、若い人が先輩を差し置いてでも真っ先に口火を切ることが、本当に大事なことではないかと思うのである。

 あえて先輩を差し置いてと言ったのは、若い人ほど、口火を切ることに慣れなければいけない、いや、それが当たり前であると言うほどに大事なこと、そう言いたいのだ。