官僚や大企業には「あがりポスト」と言われるポスト(部署・職位・地位)がある。まだその上の部署や職位・地位があるのに、見かけはトップを極めたように見える、言い換えれば名誉職みたいなものだ。

 それは政治の世界にもあり、総理大臣になれない(なれなかった)有力者が最後に就任するポストであり、よく言われるのが(衆議院・参議院)議長である。官僚なら事務次官になれなかったものが就くポストであり、大企業においては社長レースに敗れ、傍系企業の社長や監査役など、様々な形はあるが、いずれも入社時は横一線でスタートした同期の者たちの、最後の最後に差がついた者に与えられるポストである。

 いかにも、メンツや格式を慮る(おもんばかる・よくよく考えること)わが国独自の風習と言うか慣例と言うのか、最後になっていがみ合ったり争ったりすることが無いようにする知恵ともいえる。

 一見、誰も傷付かないように見えるので、それはそれで喜ばしい限りではあるが、あがりポストに就く者は、負けた悔しさや鼻差での敗因を受け入れるという、ある意味で妥協をしているということだ。一応、周囲の人たちにはおめでとうと言われ、有難うとは言いながら、まさに顔で笑って心で泣くという、なんとも言えない心情ではあるまいか。