イラスト:ニシハラダイタロウ
イラスト:ニシハラダイタロウ
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 おかしいと思うほど、多くの企業は自社の潜在能力に気付いていない。それは、滑稽に見えることもあるくらいで、言い換えれば、足元の小判が見えないのである。

 昔の人は上手いことを言う。貴重なものを与えたり見せたりしたとき、その価値が分からないことを猫に小判、そう言ったのである。確かに、猫に小判を見せても、その価値が分かるはずはない。

 そんな、猫に小判のような出来事があった。ある企業の工場を見学した時のことである。

 私はいつも、工場見学をさせていただくときには、必ず、その工場の床をしっかりと観察する。他人の工場の床を観察するなんて、小姑(こじゅうと)が嫁のお掃除ぶりのチェックをしているようで嫌な奴と思われるかもしれないが、決してそんな嫌味なことではなく、きれいな床はしっかりとものづくりができる、その証でもあるからだ。

 そして、その工場は、私が今まで見学した中でも一番と思うほど、きれいに清掃が行き届き、もちろん、ものづくりのための技術もその姿勢も素晴らしいものであった。