私は口が悪い。いや、不穏当な発言が多い、かもしれぬ。それを承知で今回は書いている。

 昔、女郎屋(じょろうや)というのがあった。お女郎さん(おじょろうさん)という女性を住まわせ、客を取らせたのである。今でいう売春宿のことで、太古の昔からあるビジネスとも言える。そこのお女郎さんの多くは、拠無い(よんどころない・やむを得ない)事情があり、泣く泣く身売りされて来た女性であった。

 昔、女の子が生まれて養うことができないとき、娘を口減らしのために女郎屋に売ることがあったのだという。しかもそれは、そう珍しくはないことだったらしい。しかし、売られた娘の心情を想うと、何と痛ましくて辛いことではなかろうか。

 買う方の女郎屋は、その交渉に亭主が当たり、いかにして安く買うか、その口実として、娘の器量(顔だち・容姿)にケチをつけ、「どうせ客も付かない器量なのだから安く買うしかない」と、現代ならば、それを言うだけで懲役刑となるような物言いで値切ったという。

 女郎屋の亭主もビジネスだから値切るのも必死、と言えるかもしれないが、こんな卑劣で下賤な職業があるだろうか。身を売るほど切ない境遇に落ちた娘とその親に対し、これ以上ない罵詈雑言を浴びせて値切るとは、およそ人間の所業とは、口に出したくもない、最悪の業ではなかろうか。