新事業・新商品開発を進める中で、最近、本当に便利になったと思うことがある。例えばGPS(global positioning system)はその最たるものだ。カーナビゲーション(car navigation system・自動車経路誘導システム)などは、知らない人はいないくらいに普及していて、もっともICT(information communication technology)らしいICTと言われるハイテク技術である。

 そのGPS、最近の報道では位置精度が従来の百倍になると言うから驚いた。何と、2、3㎝の精度で位置を表示すると言うのである。

 天上はるか数万キロにおかれた人工衛星の信号で、地上の位置が人の指二、三本の幅で分かるというのだから、「その辺」などと言う表現はなくなり、「そこ」「それ」、あるいは「角を曲がった手前の○○家の柱の角」といった、極めて高精度な位置を表示できるのである。

 このように、どこにいてもその人(物も)の「場所」が寸分(数センチ)違(たが)わず分かるということは、それだけでビジネスになる、と私は考えている。

 つまり、「場」という空間そのものを商圏として、オリジナルのビジネスを主張することができるし、「場」のビジネスこそが、これから大いに伸びる新しいビジネスモデルになると思うのである。

 「場」のビジネスとはどんなものか、いくつか考えていることを説明しよう。

 例えば、商店街では「場のバーゲンセール」ができるということだ。主催者(その商店街の事業者)が「場」を設定する。なにも、道路に線を引くわけもないし塀で囲むこともないが、商店街周辺の空間を地理空間情報システム上で勝手に設定するのである。

 もちろん、その「場」はスマホなどの情報端末で見る(見せない場合もある)ことができるようになっていて、客はその「場」に入ると「♪ピンポン」とお知らせが入り、バーゲンセールのクーポン券が当たったことを知るのである。当然、周辺の人は、この人が当たったのを知らないし、自分が当たっても、他の人は知ることはない。

 この場合、商店街に設定された「場」が、クーポン券の当たりになる条件なのである。

 あるいは、商店街から「場」が設定されたことを広く報知することもあるだろう。「先着〇〇番までは50%引き」とスマホに表示すれば、近くにいる人はその「場」に入るために急いで行くようになるだろう。

 また、「場」の順番を決め、その順番で歩いた人に景品を出すこともできるのである。まるで「場」の双六ゲームみたいなものだ。あらかじめ決められた順番で進むと何かうれししいことがあるという設定だ。

 つまり、「場」そのものに価値があるのであり、誰に所有権もない空間を、実際に自分のもののようにしてビジネスができる(もう、誰かがやっているかもしれない)のである。

 シャレではなく、「場限(バーゲン)セール」という表示もアリだ。まさに文字通りの場を限ってのインセンティブを付与する売り方である。