ドイツの「Industrie 4.0」(インダストリー4.0)は産官学一体で進めているプロジェクトだが、企業や政府に負けず劣らず、大学も重要な役割を担っている。ドイツの主要工科大学9校から成る連合体「TU9」も、インダストリー4.0の推進に関わるグループの1つだ*1。そのTU9は、2016年10月下旬に東京都内でインダストリー4.0に関するシンポジウムを開催した*2。その内容を数回にわたって紹介していく。
このシンポジウムで最初に講演したのは、TU9の関係者ではなく、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)理事長の西岡靖之氏(法政大学デザイン工学部教授)である。西岡氏はいわばゲストスピーカーという立場で、日本を代表する取り組みの1つとしてIVIの活動を紹介した。
工場を4階層で考える
IVIの話に入る前に、西岡氏は講演の冒頭で、「『つながる工場』とは何なのか?」という問いを提示した。昨今、あちこちでつながる工場というフレーズを耳にする。ただし、そこから想起するものが人によって微妙に異なることもあって、大まかなイメージは共有されているものの、詳細の議論まではなかなか至っていないように見える。しかし、詳細を詰めていかなければ実装も進まないだろう。
そこで西岡氏は、つながる工場について共通の理解を確立するために、工場を4階層に分けるという考え方を提案する。具体的には、末端で稼働するアクチュエーターやセンサーなどの「Elemental Devices」(レベル1)、それらを束ねる設備やコントローラーなどの「Equipment / Contollers」(レベル2)、生産ラインや工場全体を管理するMES(Manufacturing Execution System、製造実行システム)などの「Manufacturing Field」(レベル3)、そして工場を超えて企業全体を管理するERP(Enterprise Resource Planning、企業資源計画)などの「Enterprize Management」(レベル4)の4階層である。