価値の源泉がモノ(製品)からコト(サービス)に移る――。古くから叫ばれ続けてきたテーマではあるが、IoT(Internet of Things)によってそれが一気に実現しようとしている。しかし、製造業にその準備はできているだろうか。「顧客にサービスを提供するために必要なアーキテクチャーを構築することは非常に難しい」。英PricewaterhouseCoopers(PwC)社PrincipalでIoT & Emerging Technology LeaderのShahid Ahmed氏はそう指摘する。

PwC社のShahid Ahmed氏
PwC社のShahid Ahmed氏
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 現在、多くの工場や化学プラントなどで、IoTの考え方に基づいて生産性向上を目指した取り組みが進んでいる。例えば、機械にセンサーを付けて、センサーデータを収集・分析し、より効率的な運用に改善するというものだ。このような取り組みは、産業分野(BtoB)のIoTであることから、Industrial Internet of Things(IIoT)とも呼ばれる。

 このIIoT時代には、ビジネスモデルの軸を製品からサービスに移すべきだと、Ahmed氏は語る。それがエンゲージメント(顧客との接点)や収益を拡大することに結び付くからだ。何よりも、それを顧客が望んでいるという。

課金モデルの正当性に顧客が気付いた

PwCコンサルティングの尾崎正弘氏
PwCコンサルティングの尾崎正弘氏
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 その背景について、PwCコンサルティングのパートナーである尾崎正弘氏は次のように解説する。第1に、製品の性能や機能を進化させても、それが顧客に響きにくくなってきている。従来は、性能や機能を進化させれば、顧客にとっての価値もそれに比例して上がった。従って、短いサイクルで新製品を次々と開発・販売するというビジネスモデルが成り立っていた。しかし、ハードウエア技術の成熟化や顧客要求の多様化に伴い、このようなビジネスモデルに限界が見え始めている。

 第2に、主にソフトウエアで進んでいるクラウド化の波がハードウエアにも押し寄せている。すなわち、最初に高額なシステムを導入するのではなく、「使用した分だけ課金する(される)」という形態の“正当性”に顧客が気付き始めたのだ。「究極的には、製品は売らずにサービスで回収する課金モデルになる」(尾崎氏)。

サービス化が進む背景についての尾崎氏による解説
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サービス化が進む背景についての尾崎氏による解説
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サービス化が進む背景についての尾崎氏による解説