DMG森精機取締役社長の森雅彦氏
DMG森精機取締役社長の森雅彦氏
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 「今、大手自動車メーカーと実証実験をしているが、工場の稼働率が数%レベルで上がる。これを全世界でやりたい」

 声のトーンがほんの少し上がったような気がした。DMG森精機が大手自動車メーカーと進めているスマート工場のプロジェクトについて、同社取締役社長の森雅彦氏が紹介したときのことだ。記者会見や講演などではあまり抑揚を付けず淡々と話す印象のある森氏が興奮を隠しきれなかった(と記者には思えた)のだから、そのプロジェクトでは相当な効果が出ているのだろうし、工場のスマート化には大きな可能性が秘められているのだろう。

 そのDMG森精機は2016年9月9日、「ITの老舗」(森氏)である日本マイクロソフトと「工作機械を中心とする制御システムのセキュリティーおよびスマートファクトリーの実現」に向けて技術協力することで合意した(関連記事)。2017年春以降、両社で共同開発した製品を順次投入していく。冒頭の発言は、その記者会見で森氏が語ったものである。

 「工作機械を中心とする制御システムのセキュリティーおよびスマートファクトリーの実現」。この文言を目にしたときに記者が最初に抱いた疑問は、「なぜスマートファクトリーという全体の話よりも先に、セキュリティーという個別のテーマが挙げられているのか」ということだった。あるいは、スマートファクトリーの実現だけを挙げて、セキュリティーはその課題の1つとして触れればいいのではないかと思った。しかし、会見が始まって森氏の話に耳を傾けると、そのような文言になったのも分かるような気がした。それぐらい、DMG森精機はセキュリティーを大きな課題と認識しているのだ。