IoT(Internet of Things)によって将来の製造業はどうなるのか――。そんな問題意識の下、企業や業界の枠を超えた議論を展開しているのが、日本電機工業会(JEMA)の「スマートマニュファクチャリング特別委員会だ。これまで2回にわたり公表してきた提言書「製造業2030」の概要や、3年目を迎えた活動内容などについて、現委員長の冨田浩治氏(安川電機)と前委員長の松隈隆志氏(オムロン)に聞いた。(聞き手は高野 敦)

・1年目の報告書「製造業2030
・2年目の報告書「2016年度版 製造業2030
同委員会による製造業2030についての連載

――なぜJEMAでこのような議論が始まったのか。

JEMAスマートマニュファクチャリング特別委員会現委員長の冨田浩治氏(右)と前委員長の松隈隆志氏
JEMAスマートマニュファクチャリング特別委員会現委員長の冨田浩治氏(右)と前委員長の松隈隆志氏
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松隈 もともとJEMAでは、国際標準化の動向などを分析する「システム標準化情報交換会」でインダストリー4.0を議論していたが、そのメンバーでは“手狭”になってきたため、インダストリー4.0のベンチマーキングを目的としたスマートマニュファクチャリング特別委員会を新たに設置した。それが2015年のことだ。数ある工業会の中でもかなり早くから議論を始めていたのではないか。

 「特別委員会」となっているのは、JEMA会員企業以外のメンバーも入っているからだ。外部の知見も取り込むためで、具体的にはファナックや日本IBM、日本政策投資銀行などに参加してもらっている。そこはJEMAとしては画期的な点である。

 その他、アズビル、横河電機、産総研、法政大学、ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)、日本電気制御機器工業会(NECA)、日本配電制御システム工業会(JSIA)などからも参加している。

 1年目の活動は、「調査」の比重が高かった。「PEST分析」と呼んでいるが、政治(P:Politics)、経済(E:Economics)、社会(S:Society)の流れを見て、その中でどのような技術(T:Technology)が必要になるかを捉えることに力を注いだ。そこで出てきたのが、「FBM(Flexible Business and Manufacturing)」というコンセプトである。2030年の製造業を考えたときに、中小企業が集まって製品やサービスを作り上げる「企業ネットワーク型」と、グローバル規模でバリューチェーン全体を掌握する「メガ企業型」が存在するだろうと予測し、それらをまとめてFBMと名付けた。

PEST分析に基づいた2030年の製造業の姿(出所:「製造業2030」)
PEST分析に基づいた2030年の製造業の姿(出所:「製造業2030」)
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 様々な団体が第4次産業革命について議論しているが、我々はビジネスについても着目している点がユニークだと思っている。他の団体では、ビジネスまではあまり突っ込んだ議論をしていないのではないか。

――FBMとはどのようなコンセプトなのでしょうか。