世界130工場、15万人の知恵を「つなげる」ことで、2020年までに生産性を2015年比で30%高める――。今、デンソーは圧倒的な競争力を持つ「ダントツ工場」の構築を急速に進めている。その中核技術として同社が位置付けているのは、IoT(Internet of Things)だ。

 ダントツ工場については、同社取締役社長の有馬浩二氏が2015年6月に「14人抜き」で社長に就任して以降、折に触れて構想を披露してきた(関連記事)。実は、同月に実施した組織変更で、ダントツ工場づくりを担う「DP-Factory IoT革新室」を生産革新センターに設置している。このほど、同室の室長を務める加藤充氏がダントツ工場の実現に向けた道筋を明らかにした。

 DPは、「デンソープロジェクト(Denso Project)」の略。

 デンソーが工場におけるIoT活用を重視する背景には、製造業とIoTを巡る状況の急速な変化がある。特に注視している動向として加藤氏が挙げたのは、ドイツの「Industrie 4.0(インダストリー4.0)」と米国の「Industrial Internet Consortium(IIC)」だ。これらの動きによって業界の既存のルールなどさまざまなものが破壊され、製造業は大きな変革を迫られると同氏は指摘する。「今後、IoTに対応できていないことは、すなわちグローバル企業としての信頼が低下することを意味する」(同氏)。

IoTに関するデンソーの認識
IoTに関するデンソーの認識
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 今後は、IoTをはじめとする情報分野が「製造業の新たな競争ドメインになる」と加藤氏は見る。従来のデータ活用は、個別の設備/生産ライン/工場の可視化や最適化にとどまっていた。IoTによってその範囲を広げ、生産性向上に生かすための体制を整えておかなければ、国際的な競争に負けてしまうという危機意識がデンソーにはあるのだ。