「止まらない」「不良を造らない」を実現

 IoT活用によって実現できることとして、加藤氏は「予知・予兆管理」「重点管理」「全員オーナー/源流良化」「共創改善」を挙げる。

デンソーがIoT活用で実現を目指すこと
デンソーがIoT活用で実現を目指すこと
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 「予知・予兆管理」は、設備の故障や品質のバラつきなど異常の兆候を早期に捉えることで、「止まらない」「不良を造らない」工場を実現することである。「重点管理」は、大量のデータから分析・層別された情報に基づいて重要な管理ポイントを見極めることで、現地・現物確認の実効性を高めることだ。これによって、人をルーチン業務から解放するとともに、革新的な改善につながる創造的な業務に集中させるという狙いがある。

 「全員オーナー/源流良化」のうち全員オーナーとは、人の立場や役割に合わせて適切な情報を提供し、改善を促進することである。IoT活用で得られた情報を使えるのは、決して前出の「ものづくりを知る人」だけではない。経営層から生産現場の作業者まで、それぞれが必要としている情報を手軽に使えるようにすることで、「源流良化」と呼ぶ革新的な改善を生み出す。

 加藤氏によれば、欧米はIoT活用の目的として主に技術者への情報提供を念頭に置いており、現場の技能者などへの情報提供は想定していないように見えるという。従って、全員オーナーという考え方は欧米の競合他社と差異化する上での大きなポイントになり得る。

 「共創改善」は、事業や地域の枠を超えて革新事例を導入することだ。従来は、特に国内工場の取り組みを海外工場に持ち込むことに苦労していた。今後は、映像を使って国内工場と海外工場で同時に教育を実施するなど、海外工場のレベルを引き上げていく。