これまで、産業用ロボットを使う工場の生産ラインでは、人とロボットを完全に「隔離」することで安全を確保していた。ところが近年、人とロボットがすぐそばで協業する新しいものづくりのコンセプトが次々と提唱されている。そのようなコンセプトを実現するには、「隔離」を超える新たな安全技術が不可欠だ。

 現状では、ロボットは安全柵などによって隔離された状態で稼働している。それを越えて人が近づこうとすれば、ロボットを止める。メンテナンスやティーチングなど、どうしても人が近くにいる状況でロボットを動かさなければならない場合、自動運転を禁止した上で手動での操作による一定速度以下の運転だけを許可する。

 これならば、確かに安全である。しかし、人とロボットが協業するという「ロボット革命」や「Industrie 4.0」などで提唱されていることは実現できない。裏を返せば、ものづくりのスマート化を実現するカギは、安全技術の進化にあるのだ。

 例えば、こんな解決策はどうだろうか。ロボットは隔離されておらず、自動運転している。3日前に配属されたばかりの新人作業者が近づくとロボットは停止する。一方、作業や安全のことを知り尽くしたベテラン作業者が近づくと、ロボットは速度こそ落とすものの、稼働し続ける。すなわち、人の習熟度に合わせて制御を切り替えれば、協業と安全を両立できるというわけである。