今や世界的なLED産業の集積地となった中国の照明市場に、二つの大きな変革が起きている。一つは、照明とインターネット技術の融合や、紫外LEDなどの新技術に積極的に打って出る動きの活発化。もう一つは、自動車用照明を軸にしたM&A(合併・買収)による業界再編である。
例えば、2015年6月に広東省広州市で開催された「第20回広州国際照明展」では、変革期にある中国のLED照明産業の現状が鮮明に浮かび上がった。
中国のLED産業は、新たなフェーズに向かっている。これまでの「OEM産業としてのLED生産」から「LEDの自国産化」「部品(川上)から照明器具(川下)までのサプライチェーン構築」を経て、新たな産業変化が起きている。これが、第1の変革である新技術への積極的な取り組みだ。
インターネットやIT関連の企業がLEDへの取り組みを本格化
では、新たなフェーズとは何か。それは、「IoT(Internet of Things、モノのインターネット)」に代表されるインターネットと照明の融合だ。省エネ管理を中心にした「HEMS(家庭用エネルギー管理システム)」や「スマートライティング」と呼ばれる技術キーワードのアピールが、以前にも増して目立つようになった。世界の工場としてLED関連製品を生産してきた中国企業が、ここにきて積極的に照明システムの提案へと名乗りを上げている。
例えば、中国OPPLE Lighting(欧普)社は、展示会で他社が照明器具を所狭しと並べる中、製品コンセプトを訴求している。
ジェスチャーコントロールによる照明の制御技術や、対象物の色に合わせて照明光の彩度や波長を自動調整し、照明下にいる人が好ましい色に見えるようにする技術、スピーカーが発する音に応じて照明光を変える音とあかりの融合技術などをアピールした。
ネットワークの活用による照明のシステム化が象徴するLED照明分野のすそ野の広がりには、中国国内のインターネット企業やIT関連企業が大きな興味を持ち始めている。
展示会には姿を見せていないものの、電子商取引(EC)サービスで中国最大手のAlibaba Group(アリババ集団)は、同社のECサービス上でLED照明を垂直統合で販売する新サービスを開始する計画だ。 物流から、国際取引、個人消費、支払いまでのすべてを同社が運営する電子商取引サービスで完結する仕組みを築く。
低価格スマートフォンで急成長を遂げた中国Xiaomi社(小米科技)は、Shanghai Yaming Lighting(上海亜明)社やOPPLE Lighting社、Forest Lighting(木林森)社など照明メーカー13社と一般家庭向けのスマートライティングの普及で提携した。LED業界の外との連携によって、今後照明システム関連のソフトウエア開発は本格化する気配だ。