(2)米PERFECT COFFEE社(2013年創業)
 元々Apple社のエンジニアだった創業者が、コーヒーは豆をひく段階で味がほぼ決まることに着目して、一眼レフカメラと画像解析ソフトを組み合わせて、コーヒーの粉の最適なサイズを計算するシステムを開発した。加えて、一度豆をひくと空気に触れる面積が増えて酸化しやすいため、酸素をほとんど含まないパックも開発し、コーヒーの粉をほぼ挽きたてに近い状態で2、3カ月保存できるようにした。これら2つの発明により、家庭でも熟練のロースターがひいたようなコーヒーの粉をひきたてに限りなく近い状態で長期保存できるようになった。なお、同社は、2015年2月にBLUE BOTTLE COFFEE社に買収され、現在はBLUE BOTTLE COFFEEファミリーの一員になっている。

 残念ながら、筆者はこれら(1)(2)のコーヒーの美味しさをまだ体験したことがないが、次に紹介するStarbucks社のコーヒーメーカー「Clover」で淹(い)れた高級コーヒーを先日味わい、テクノロジーの力を再認識した。

(3)Starbucks社のコーヒーメーカー「Clover」
 Starbucks社は、一部の旗艦店で「Starbucks Reserve」というサービスを提供している。それは、コーヒーのサードウェーブの店のように高品質のコーヒーを提供するサービスである。風味や味わいなど個性が強い高級なコーヒー豆は量が少ない。幅広く提供するだけの量を確保できないことから、Starbucks社では従来はその提供を見送っていた。Starbucks Reserveでは、そうした高級豆から淹れたコーヒーを提供する。そのために導入したのが専用のコーヒーメーカー「Clover」である。個性豊かで質が高い高級豆の風味や味わいを損なわないようにデジタル制御を取り入れたコーヒーメーカーだ。これにより、非常に少量しか手に入らない高級豆から淹れたコーヒーに出合うことが可能になった。Cloverは、コーヒーの味に大きな影響を与える抽出時間や温度の変化をデジタルで制御する。これにより理想的な抽出温度を常に維持し、適度な蒸らしを加えて味を引き出す。抽出したコーヒーを香りを逃さずカップに注ぐ工夫も施されている。Starbucks社では、さらに「CloverNet」というシステムを開発し、ネットワーク経由でCloverの稼働状況を収集・分析したり、本部からCloverにアクセスして豆ごとに水の温度や在留時間を設定したりできるようになっている。これらの取り組みにより、従業員に依存せずに安定した商品を提供可能になったという。

「Starbucks Reserve」コーナー
「Starbucks Reserve」コーナー
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コーヒーメーカー「Clover」
コーヒーメーカー「Clover」
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