2017年8月25日に東京で開催された「Smart Kitchen Summit Japan」に参加した。大変刺激を受けた1日だった。近年、世界の日本食ブームと和食のユネスコ無形文化遺産登録により、日本国内では日本が食と料理に関わるテクノロジーで世界をリードしていると思う人も多いだろう。だが、「フードテック(foodtech)」はブームと言えるくらいに米国中心に急速に発展しており、日本は既に遅れつつある。今回は、Smart Kitchen Summit Japanで学んだことについて紹介する。

フードテックとスマートキッチン

 筆者は、数年前に書店のITコーナーで料理に関する「Cook for Geek」という書籍を偶然見かけてとてもびっくりしたことを今でも覚えている。同書は、米国で出版されたもので、ギーク(特定のテーマに対して卓越した知識を持つ人々)やエンジニア、プログラマのために料理の科学的な仕組みを詳細に解説する書籍。それを見て、“アナログ”の料理の世界がまさに変わろうとしていると感じた。その後、実際に米IBM社の人工知能(AI)技術を用いたシステム「Watson」がレシピを開発したり、米国最大のコンシューマーエレクトロニクス関連の展示会「CES」と欧州最大の同「IFA」では、数多くのIoT(Internet of Things)調理家電が登場したと、AIやIoTなどのハイテクと料理が急速に接近してきている。

 近年、米国では食の分野はITやバイオに次ぐ成長分野として、ヒトとカネが流入し始めている。テクノロジーの進化も加速しており、AI、ビッグデータ、IoT、3Dプリンターなどの新たな技術が続々と登場してきている。一方、食についても、食糧危機や食の安全性、健康意識の向上、料理に伴う便利さの追求などの後押しもあり、消費者の関心が高まってきている。そうした背景もあり、食にまつわる生産、物流、調理といったさまざまな場面で新たなイノベーションが起こりやすくなってきているといえる。