「和食」と「日本食」はいずれも馴染みのある言葉だ。同じような意味合いで使われているケースが多く見受けられるが、実はそれらには違いがあるようだ。筆者が調べたところでは、日本で生まれ、あるいは日本でアレンジされて、日本で食べられている国民的な食の総称が日本食。その中には、伝統的な懐石料理や郷土料理のような和食も含まれる。和食以外で日本食に当たるのが、カレーやラーメンのような日本的にアレンジされた外来食。なぜ、和食と日本食はこのような違いがあるのか。なぜ、その違いから日本が見えると筆者は考えるのか。今回はこの点について考察したい。

日本食=和食+(洋食+中華料理)

 近年、和食の世界的な知名度をさらに高めたのが、和食のユネスコ無形文化遺産への登録である。そのこと自体は非常に喜ばしいことである。ただ、なぜ日本食ではなく和食だったのか。そもそも和食とは何なのか。まずはこの点から見ていこう。

 農林水産省のホームページによれば、和食は以下の四つの特徴を備える。
(1)多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
(2)健康的な食生活を支える栄養バランス
(3)自然の美しさや季節の移ろいの表現
(4)正月などの年中行事との密接な関わり

 日本の国土は南北に長い。しかも海や山、平地と変化に富んだ自然が広がっている。このため、日本人の伝統的な食文化である和食では、各地域に根差したさまざまな食材が用いられ、「自然を尊ぶ」という日本人の気質に基づいて、それらの素材の味わいを生かす調理技術や調理道具が発達した。和食とは、そうした食材と調理技術・道具に支えられて育まれた食文化だ。

 しかし日本では、こうした和食だけではなく、オムライス、カレーライス、ラーメン、焼き餃子などの人気料理もある。しかも、これらの料理は、その起源となった国の料理とはもはやかけ離れ、似ても似つかわなくなっている。このような料理は「洋食」や「中華料理」などと呼ばれて、その起源となった料理が日本の文化や嗜好に合わせて少しずつアレンジされていき独自に変化していったものだ。

 今回は明確な定義を見つけられなかったが、和食を含めて、これらの料理を総じて「日本食」と言うことが多い。ちょっとややこしいのは、「日本料理」という言い方だ。それが指す範囲は基本的には和食と同じと見られる。つまり、和食と日本料理は伝統的なものを指して、日本食は日本の日常的な食事を意味することが多い。数式で表すと、次のようになる。

 日本食=和食+(洋食+中華料理)
 和食=日本食-(洋食+中華料理)
 洋食+中華料理=日本食-和食

 ちなみに、日本でそれほどアレンジされていない海外の食は、そのまま、その国の名前で呼ばれていると筆者は理解している。例えば、中国料理、フランス料理がそれだ。