2016年の正月に故郷の中国・西安に帰省した。その時、西安の名物料理である「餃子宴」(ぎょうざえん)を食べに行った。餃子宴というのは、文字通り、さまざまな餃子が食べられる料理。一緒に行ったみんなは、食べる前に、今ではどこでも見られる光景のように、スマートフォン(スマホ)を取り出して餃子の写真を撮っていた。それらのスマホはそれぞれ奇麗なケースに入れられており、餃子宴の多彩な餃子と同様に目を奪う。そこで、ふとひらめいたのが、餃子の形とスマホケースの間には類似点があるのではないかという発想だ。

 このコラムでは以前、焼き餃子の皮の進化を製造工程とビジネスモデルの観点から紹介した。今回は、また餃子の皮だが、焼き餃子ではなく蒸し餃子の皮を取り上げて、異業種のスマホの“皮”との比較を試みてみる。食文化とハイテクの“付属品”である“皮”の役割は、ますます重要になってきている。

西安の餃子宴とは

 西安には、さまざまな有名なものがある。例えば、世界遺産の兵馬俑(へいばよう)と世界最大規模の現存の古代城壁などだが、西安料理の中ではとりわけ餃子宴が知られている。ただし、その餃子は、水餃子でも焼き餃子でもなく蒸し餃子である。

 通常の蒸し餃子は、水餃子などとあまり形は変わらない。しかし、西安の蒸し餃子には、鶏、魚、葉、きのこ、レンコンなどさまざまな形のものがある。しかも、皮の形の違いだけではなく、皮の上にはさまざまなデコレーションが施されているものもある。そこに、具の組み合わせが相まって、色、香り、味、形の全てに変化が出てくる。そうした違いがそれぞれの餃子に個性を持たせ、見ても楽しく食べても美味しく、それぞれの良さが味わえる。餃子宴では、そうした変化に富んだいろんな種類の蒸し餃子が“宴”のように供される。餃子宴はまさしく、西安の餃子店が生み出した伝統の餃子の概念を越えた革新的な餃子料理といえ、そこでは具を単に包むだけだった餃子の皮に新たな価値を付け加えている。

餃子宴のさまざまな形の餃子(その1)
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餃子宴のさまざまな形の餃子(その1)
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餃子宴のさまざまな形の餃子(その1)
餃子宴のさまざまな形の餃子(その2)
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餃子宴のさまざまな形の餃子(その2)
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餃子宴のさまざまな形の餃子(その2)