図1●慶北大学病院のアプリのメイン画面。自分の順番になるとアプリの一番上に「~番診療室まで来てください」というメッセージが表示される。その他の機能として「診療カード」「スマート決済」「診療受付」「院内ナビゲーション」「診療待機順」などがある
図1●慶北大学病院のアプリのメイン画面。自分の順番になるとアプリの一番上に「~番診療室まで来てください」というメッセージが表示される。その他の機能として「診療カード」「スマート決済」「診療受付」「院内ナビゲーション」「診療待機順」などがある
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 ショッピングモールの道案内によく使われるビーコン。韓国では、ビーコンを使って生活をより便利にしたり、人を支援したりするアイデアが相次ぎ登場している。中でも人気を集めているのが、病院でのビーコン活用だ。

 ソウル大学病院や慶北大学病院、釜山大学病院といった韓国の主要大学病院は、2014年から院内にビーコンを設置し、アプリも提供している。病院の診療予約から、診療当日どこに行って何をしたらいいのかといった道案内と診療案内までを、ビーコンとアプリで提供する形だ。

 これらの仕組みではまず、病院が提供するアプリ(以下、病院アプリ)をスマートフォンなどにインストールし、診療予約をする。予約した時間に病院に到着すると、ビーコンと病院アプリが反応し、受付はどこで次はどこで検査をし、どの診察室にいけばいいか、乗り換え案内のナビのように教えてくれる。診療が終わると、アプリには診療費の明細が表示される。

 慶北大学病院の事例では、診療費をアプリ経由でクレジットカード払いできるため、診療後に会計を待つ必要もなくなった。処方箋もアプリ経由で表示される。診療に必要な基本情報は最初の1回だけ確認すれば済むため、受付のたびに保険証を提示したり、個人情報を書いたりする手間も省ける。

 ソウル大学病院の調べによると、病院を訪れた患者がもっとも不満に思うのが「長い待ち時間」。ビーコンと病院アプリが登場する以前は、受付後に自分の番号がいつ呼ばれるか分からないため、どこにも行けず、番号が表示されるモニターの前でずっと待ち続けるしかなかった。

図2●モバイル決済画面。診療日や診療科目、医師名、診療費が表示され、黄色いボタンをクリックしてモバイル決済画面に移動する(クレジットカード払い)
図2●モバイル決済画面。診療日や診療科目、医師名、診療費が表示され、黄色いボタンをクリックしてモバイル決済画面に移動する(クレジットカード払い)
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 大学病院は、患者が極めて多く集まるため、診療予約してもかなり待たされることが多い。「3時間待ち、30秒診療」と揶揄(やゆ)されたこともあった。診察を受けて検査し、再び診察を受けて会計し、薬をもらうまでに、ほぼ一日中病院に拘束されるような形だ。こうした状況では、長時間待つ覚悟がなければ大学病院には行けない。これが、ビーコンと病院アプリによってかなり改善された。

 ビーコンと病院アプリを使えば、患者が病院に到着した時点で何人の患者が待っており、予想待ち時間は何分で、今からどこに行って何をすればいいか、アプリに従って動けばよくなる。「番号が呼ばれるまで、とにかく待ってください」と放置される場合に比べて、待ち時間などの状況を把握できることで安心できる。院内のどこにいてもアプリがリアルタイムで待ち人数や待ち時間を更新し、自分の番が近づくとどこに行けばいいかを教えてくれるため、モニターの前でじっと待つ窮屈な思いをせずに済むわけだ。