韓国の医療政策を担当する保健福祉部(部は日本の省に相当)は2017年1月、政府組織や公務員を管理する行政自治部の許可を得て「デジタル医療制度課」を新設した。これまで「遠隔医療制度化タスクフォースチーム」として運営していた組織を、正式な部署に格上げ。本格的に遠隔医療を進める意志を固めたことをアピールした形だ(関連記事1同2)。

 保健福祉部内には以前から「保健医療情報課」が存在した。新設したデジタル医療制度課では対象をより明確にし、「遠隔医療実証実験事業」「スマートフォンを使った慢性疾患管理実証実験事業」「病院間の電子診療情報交流事業」という3事業を主に担当する。韓国では「課」を新設するには保健福祉部の組織管理関連法を改訂する必要があるため、同課の業務が本格的に始まるのは2017年4月となる見込みである。

 保健福祉部の2017年の業務計画を見ると、「ICT+医療」に一層力を入れることを強調した内容だ。2017年の目標として、「第4次産業革命や高齢化といった医療環境の変化に対応できるよう、保健医療技術の育成に力を入れる。人工知能に基づくがん診断治療・新薬・医療機器の開発を支援する。医療の死角をなくすICT医療を拡散させる」ことを掲げている。

 具体的には「遠洋船舶・老人介護施設・軍部隊・救急医療機関の遠隔医療許可」「医療法改訂による医者-患者間遠隔医療開始」「医療機関間の電子診療情報交流拡大」「大型-中小医療機関間の協診活性化」などを目標に据えた。このうち医療機関間の電子診療情報交流に関しては、参加する医療機関にインセンティブを与える方針。その具体的な内容は2017年6月までに発表予定という。

 さらに、医者-患者間の遠隔医療をできるだけ早く始めたいという意向を保健福祉部は持つ。2017年7月には、大型介護施設における医者-患者間遠隔医療の実証実験に着手する。

 ここで、韓国では保健福祉部もメディアも「遠隔診療」よりも「遠隔医療」という言葉を使うことが多いことに注意したい。遠隔診療は、医療機関で行われる診療行為をテレビ電話のような通信手段で行うこと。対して遠隔医療はより広い概念だ。遠隔診療はもちろん、患者の生体データを病院に送信する遠隔モニタリング、疾病予防のための遠隔ヘルスケア、遠隔処方、遠隔救急処置など、遠隔で行う医療関連行為をすべて含める。