医療クラウドのベンチャーも登場

 韓国のベンチャー第1号で、初の医療情報企業でもあるBITコンピューター社は、クラウドコンピューティング環境の統合医療情報システム(Hospital Information System)である「CLEMR」を披露した。CLEMRはCloudとEMR(電子医療記録)の合成語である。

 CLEMRでは、ハードウエアのシステムを構築することなく、OCS(電子処方箋)やEMR、ERP(基幹系情報システム)をクラウド上で利用できる。病院の規模に応じ、必要な機能をモジュール単位で追加可能だ。

 患者が多く集まる時間帯には自動で接続サーバー数を増やしてアクセスの負荷を軽くし、患者が少ない時間帯はシステムの稼働を最小限にして費用を節約する。データの暗号化や電子認証、電子署名、SSL基盤ネットワーク暗号サポートなど、セキュリティー面にも配慮。このほか、検索エンジンと機械学習で患者の診療情報をすぐに探せるようにしている。

 BITコンピューター社は「医療情報のデジタル化によって、医療機関が生みだすデータ量は爆発的に増加している。こうしたデータを安全に保管し、管理することはいまや医療機関の悩みの種。医療機関は常に人手が足らず、その一方でセキュリティーは万全でなくてはならない。こうした観点からは、クラウドコンピューティングを利用することが賢明だ」と説明する。

 会場ではこのほか、介護ロボットや医療ロボットが多数展示された。米国や日本のものに比べると、発展途上という印象が否めないものが多い。

 展示会と並行して開催されたセミナーで目立ったのは、「AI×医療」をテーマにした事例紹介だ。例えば、2016年12月に韓国の医療機関として初めて米IBM社のがん診療支援システム「IBM Watson for Oncology」を導入したカチョン大学ギル病院(仁川市)の医師らが登壇。同システムを実際に使ってみたところ、医者の立場からどうだったか、患者の反応はどうだったかなどを紹介した。

 同病院では、医師とIBM Watson for Oncologyが提示した治療法が微妙に違っていた時に、Watsonが提示する治療法を選択した大腸がん患者もいたという。「患者が医師よりも人工知能を選択したことは衝撃だった」と、同病院の医師は話している。