年末の恒例企画として、今年も日経デジタルヘルス編集部では新たな1年を占う10大キーワードを選出しました。2017年を展望する10のキーワードを、五十音順で順に紹介していきます。

■前回の「編集部が選ぶ、2016年を占う10大キーワード」はこちら

2017年を占う10大キーワード(五十音順)

1)医療クラウド

 医療分野でのクラウド活用は、厚生労働省の「診療録等の保存を行う場所について」の一部改正(2010年2月)によって、その可能性が高まった。それから数年、ここにきて、ようやく医療機関における実質的な活用が広がりだす兆しが見えてきた。これまで医療情報をクラウド上で扱うことに対しては、情報漏えいのリスクから否定的な意見が多かったが、今では9割以上の病院がクラウドサービスの利用を肯定的にとらえているという調査もある(関連記事)

 注目は、中規模以上の病院向け電子カルテのクラウド化の進展が予想されること。大手電子カルテベンダーによるクラウド版の開発が進行中で、案件ベースの需要は想像以上という声も聞こえてくる。診療所向けクラウド型電子カルテの利用は既に進んでいる。部門システムや各種アプリケーションとの連携も増え、2017年以降さらに拡大する様相だ。この他、医療介護連携を支援する多職種情報共有ツールは、その多くがクラウドサービスとして提供されている。

 医療機関の情報系システムのクラウドサービス利用は一般化しつつあり、治験業務におけるリモートSDV(Source Data Verification)システムなどをクラウド上に構築する例も登場した(関連記事)。バイオ医薬品の有害事象予測のモデル作成に機械学習のクラウドサービスを利用する試みも始まった(関連記事)。こうした医療クラウドのさまざまな活用事例は、2017年に相次ぎ登場しそうだ。

2)医療情報の2次利用

 2015年9月に成立した改正個人情報保護法が、2017年にいよいよ施行される。これが大きな影響を与えると予想される分野の1つが、医療情報の2次利用だ(関連記事関連記事)。

 改正法では、個人情報の定義の明確化や個人情報保護の強化が盛り込まれた。一方、データの利活用を促すことを狙いとした新たな類型として注目されるのが「匿名加工情報」である(関連記事)。特定の個人を識別できないように、個人情報を加工したものを指す。

 医療情報を匿名加工し医療研究などに利用する上での認定機関/制度を設け、医療情報のセキュアな2次利用を促進する。そんな制度設計を政府が進めている。「代理機関制度(仮称)」がそれだ(関連記事)。複数の医療機関から医療情報を集め、匿名化した上で第三者に提供する機関の認定制度をつくるもので、関連法案が2017年の早い時期に国会に提出される見込み。医療情報の本格的な利活用に向けた試金石となりそうだ。