7)心のヘルスケア

 身体の不調以上に日常生活に大きな支障をもたらすことがあるのが、心(メンタル)の不調。メンタルヘルス不調による離職や自殺は、すでに大きな社会問題だ。にもかかわらず、メンタルヘルス不調を科学的に捉え、重症化予防につなげる取り組みはこれまで遅れていた。疾患の重症度などの指標となる「バイオマーカー」が不在な領域といえる。

 しかし、ここにきてメンタルヘルスの科学的分析にようやく光が当たり始めた。ウエアラブル端末や機械学習(人工知能)など、有力なツールが登場してきたからだ。慶応義塾大学は日本マイクロソフトやソフトバンクなどとともに、機械学習を使ってメンタルヘルスを定量化する研究に着手(関連記事)。発話時の声から、心の健康を可視化しようというユニークな試みもある(関連記事)。

 2015年12月からは、従業員数50人以上の事業所に対して年に1度、従業員の「ストレスチェック」が義務づけられた(関連記事)。従業員の心理的負担を把握する検査や、検査結果に基づく医師による面接指導の実施が求められる。ストレスチェックへの適用をにらんだメンタルヘルス定量化サービスが、2016年は続々と登場しそうだ。

8)次世代電子カルテ

 導入開始から10数年、電子カルテが次の段階へと差し掛かるべき時に来ている。1999年に業界初の電子カルテシステムをパッケージ化した富士通は、大刷新を図った電子カルテを2015年7月に発表。将来の医療データ活用構想を見据えたシステムに一新したのだ(関連記事)

 このように、単にデータを電子的に記録・保管するだけではなく、そのデータを連携・活用することが重要になってきている。その流れの一環として、例えば東京都医師会は2015年11月、都内の地域包括ケア実現への第1段階として、富士通とNECのシステムの相互連携を推進することを発表した(関連記事)

 一方、「カルテは基本的には患者のもの。だから、患者に返す」――。そんな発想のもとに、患者が自らの診療情報の一部をパソコンやスマートフォンで保管・閲覧できるシステムの提供を、メディカル・データ・ビジョンが2015年6月に開始した(関連記事)。これら電子カルテをめぐる新たな取り試みが2016年も相次ぎそうだ。