“スマホアプリの治験”を開始する――。ベンチャー企業のキュア・アップは2017年10月、かねて開発を進めていたニコチン依存症の精神疾患に対して治療を行うアプリの治験を開始すると発表しました。

 スマホアプリを医療に利用しようという機運が、にわかに高まってきています。背景には、アプリの作成・活用がより身近になってきたことに加え、2014年末に施行された「医薬品医療機器等法(薬機法)」において、スマホアプリなどの単体ソフトウエアが医療機器として認められるようになったことがあります。冒頭のキュア・アップの治験は、まさに治療用の医療機器としての許認可を目指すためのものです。

 日経デジタルヘルスの2017年上半期アクセスランキング7位の記事「『とりあえず睡眠薬』はもう終わり」の中でも、睡眠薬の代わりに医師が患者に処方することを想定したスマホアプリを紹介しています。ベンチャー企業のサスメドが開発を進めている「yawn」です。こちらも2017年度中の治験開始を目指しているようです。

 国内における治療用の医療アプリとしては、これらの事例が先頭集団となりますが、もちろん治療用以外では既に医療機器として認められているスマホアプリは幾つも出てきています。その中でも、日本で初めて保険診療での使用が認められたスマホアプリが、ランキング9位の「これが日本初の保険適用アプリ、『Join』の実力は…」で紹介している「Join」です。

 こうした動きに続こうと、今後、アプリ活用型の臨床研究は確実に増えていくでしょう。ただし、新たな形態の臨床研究だけに“前例”が少なく、特有のスキームも固まっていません。果たして、アプリを用いた臨床研究では、どのような点への配慮が必要になるのか。そして、アプリ活用型研究にふさわしいガイドラインや倫理規定とはどのようなものか――。それを探ったのが、ランキング2位に入った記事「慶応医学部『iPhoneアプリ臨床研究中止』の波紋」です。

 このように、上半期のランキングにはスマホアプリの医療活用に関連する記事が複数ランクインしています。冒頭のキュア・アップのニュースをはじめ、下半期以降も関連する話題が相次ぎ登場してきそうです。