打ち消し表示ありでも効果への期待は変わらない

 調査の結果、体験談に気付いた443人のうち、53.0%が「『体験談と同じような効果』が得られる人がいる」、42.2%が「『大体の人』が効果を得られる」、39.3%が「『自分に効果がある』と思う」と回答した。加えて、体験談には気付いたが打ち消し表示に気が付かなかった369人に、再度打ち消し表示を提示したが、効果に対する認識が大きく変化することはなかった。つまり、実際に製品を摂取した人の体験談を見た一般消費者は、大体の人に効果がある製品だという認識を抱き、「個人の感想」「効果は保証しない」という打ち消し表示に気付いたとしても、「効果が得られる」という認識を大きく変える人はほとんどいないということだ。

 そのため報告書では、商品を使用しても効果・性能などを全く得られないケースが少なくないにもかかわらず、商品の効果・性能などがあったという体験談を表示した場合、打ち消し表示が明瞭に記載されていたとしても、一般消費者の多くが何らかの効果・性能を得られるという認識を抱くと考えられると指摘。その上で、「商品・サービスの内容について実際のもの等よりも著しく優良であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある」としている。

 さらに、体験談を表示することで一般消費者の誤認を招かないようにするためには、商品やサービスの効果・性能などに適切に対応した表現を用いることが必要とした。具体的には、商品の効果・性能に関して事業者が調査を行った上で、
(i)被験者の数およびその属性
(ii)そのうち体験談と同じような効果、性能等が得られた者が占める割合
(iii)体験談と同じような効果、性能等が得られなかった者が占める割合
といったことを明瞭に表示すべきと求めている。

 一方で医師に求められるのは、患者に摂取している健康食品について相談された際、頭ごなしに否定することなく医療者として適切な情報提供をし、患者が標準医療から離れないようなコミュニケーションを取ることだろう(「ニセ医学」にだまされても患者の自己責任?)。個々の健康食品には問題がなくても、用量以上の摂取をしたり、複数の健康食品を一度に摂取すると思わぬ健康被害が起こる可能性もある。患者の健康被害を防ぐために知っておきたいことや公的な情報提供サイトについては、日本医師会と厚生労働省、国立健康・栄養研究所が作成した手引きが参考になりそうだ。