今年2月に公開した筆者の「記者の眼」(「保険外サービス」規制緩和のインパクト)で、高齢者が生活支援サービスを全額自己負担で利用する、いわゆる「介護保険外サービス」について取り上げました。

写真1 『地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集 保険外サービス活用ガイドブック』(厚生労働省、経済産業省、農林水産省)
写真1 『地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集 保険外サービス活用ガイドブック』(厚生労働省、経済産業省、農林水産省)
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 膨張する社会保障費の抑制を目的に、2018年度介護保険制度改正では保険給付の対象から軽度の要介護者が外される可能性があり、介護事業者の間では経営安定化策として介護保険外サービスへの参入が取り沙汰されています。前回の記事では、国も介護保険外サービスの支援に乗り出し、厚生労働省・経済産業省・農林水産省の3省が共同で介護保険外サービスの活用ガイドブックの発行を準備していることをお伝えしました。

 その後、予定通り3月末に『地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集 保険外サービス活用ガイドブック』(写真1、PDF)が発行され、詳しい内容が明らかになりました。高齢者向けの家事代行や食事支援のほか、旅行サービスなど39事例が紹介されています(図1)。

図1 『保険外サービス活用ガイドブック』の紹介事例。高齢者の身体状態やサービスの性格に着目して整理したもの。
図1 『保険外サービス活用ガイドブック』の紹介事例。高齢者の身体状態やサービスの性格に着目して整理したもの。
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 国がこれだけ力を注ぐ背景には、介護保険による高齢者の生活支援が限界を迎えつつあることへの危機感があります。ガイドブック策定の事務局を務めた経産省の商務情報政策局ヘルスケア産業課は、「団塊世代が75歳以上になる2025年を見据え、要介護高齢者の在宅生活を支える地域包括ケアシステムで保険外サービスも一翼を担うべきだ」との見解を示しています。