ここ1年ほど日経デジタルヘルスの取材でいろんな講演を聞く機会があった。最先端医療から日常の健康維持に関するノウハウまで多くの興味深い話があったが、中でも印象に残っているのが、健康寿命に関する東京大学 高齢社会総合研究機構 特任教授の秋山弘子氏の研究である。秋山氏自身の講演を聞いたわけではないが、その研究内容はテルモ会長の中尾浩治氏の講演などで引用されていた(関連記事)。

 秋山氏の研究は2000人以上を20年にわたって追跡調査して、実際の寿命と健康寿命の関係を調べたものである。その結果から、男性を「死ぬ間際まで健康寿命を維持して、ある日バタンと亡くなる」(1割)、「徐々に弱っていって亡くなる」(7割)、「70代に急に弱って、死ぬまで悪い状態が続く」(2割弱)の3グループ、女性を「徐々に弱っていって亡くなる」(8割強)、「70代に急に弱って、死ぬまで悪い状態が続く」(1割強)の2グループに分類する。

 事故や災害に巻き込まれず、大病しなかった場合に自分があと何年ぐらい生きるかは、厚生労働省が公表する「主な年齢の平均余命」を見ると、大まかな予想がつく。ただ、その歳まで運よく生きるとして、健康を維持して自立した生活を営める健康寿命が何歳ぐらいまでなのか、なかなか予想がつかない。

 人それぞれだろうと言われればその通りで、考えるだけ無駄な気もするが、それでも男性の1割が「死ぬ間際まで健康寿命を維持して、ある日バタンと亡くなる」だとすると、何とかそのグループに潜り込みたいとは考える。では、そのために何をすればよいのか。適度な運動、バランスのとれた食生活、充実したセカンドライフなど、一般論としてはいろいろ考えられるが、それらを実践したからといって、「徐々に弱っていって亡くなる」はずだった人が「死ぬ間際まで健康寿命を維持して、ある日バタンと亡くなる」になれるとは限らない。

 この4月から日経デジタルヘルスの担当を離れることになったが、このあたりの動向については、個人的な興味を持って今後もウォッチしていきたいと考えている。