「日経メディカル」記者の眼 2016年2月10日付の記事より

 2018年度の介護保険制度改正に向けて、近々、厚生労働省の社会保障審議会・介護保険部会で本格的な審議が始まります。膨張する社会保障費を抑制するため、介護保険の給付対象から軽度者が外される可能性が高いだけに、介護事業者にとってはその対策が今後の大きな経営課題になりそうです。

 介護保険部会での主な見直し項目の1つが、自宅の要介護高齢者の世話をヘルパーが行う訪問介護の生活援助サービス。介護の必要度が比較的低い要介護1・2の人を対象に、買い物や食事の調理などの援助メニューを介護保険給付から外し、原則自己負担とすることが検討される見通しです。既に財務省は昨年、同様の内容の介護給付見直し案を提示しています。

厚労省など3省が保険外サービス事例集を発行

 介護保険の給付範囲縮小の議論に関連して注目されるのが、利用者が費用を全額負担する「介護保険外サービス」です。介護報酬のマイナス改定のリスクに備え、介護事業者の間では以前から事業化の必要性が指摘されていました。しかし、とりわけ介護保険サービスに介護保険外サービスを組み合わせて提供する「混合介護」については、介護保険法上で認められていても現実には各種の規制の壁があり、参入が進んでいませんでした。

 介護経営コンサルタントの小濱道博氏は次のように指摘します。「例えば、訪問介護でヘルパーのAさんが1時間の身体介護を行い、その後に全額自費の家事代行サービスとして家屋の掃除を行う場合、役所の解釈や指導に問題があった。『そのままAさんが続けて掃除を行うのは好ましくない』との判断から、Aさんがいったん事業所に戻って出直すか、別のBさんが掃除を担当することで、時間の区切りを明確にするように多くの役所が求めてきた。しかし、これは運営上とても非効率であり、保険外サービスの普及を阻害している」。

 また、要介護高齢者の日中の預かり施設である通所介護事業所で、利用者が帰宅後に食べる弁当を保険外サービスとして全額自費で販売できるかどうかも自治体によって解釈が異なり、食品衛生法などとの関係や安全性の問題から許可されないケースがかなりありました。「高齢者が介護保険サービスと混同する」との理由も聞かれます。