経営再建中の東芝。今、注目が集まっているのはメモリー事業への外部資本導入・分社化の話題ですが、約1年前に同様の展開が繰り広げられていたのが、医療事業(東芝メディカルシステムズ)の売却でした。

 日経デジタルヘルスの2017年1月アクセスランキングの1位に入った「キヤノン御手洗会長、東芝メディカル買収を語る」では、その東芝メディカルシステムズを買収したキヤノンの御手洗冨士夫氏が、医療への参入が創業以来の念願だったことを語っています。

 東芝メディカルシステムズは、東芝子会社の中では“優等生”でした。他の事業が軒並み赤字となる中でも、東芝メディカルシステムズを中核とするヘルスケア事業は黒字を確保。売り上げも拡大基調だったのです。しかし、好調だったがゆえに、短期間で買い手が見つかるとの判断から、真っ先に売却の候補になったわけです。

 一方、キヤノンは主力としてきたカメラやプリンターの市場が「成熟化が進み、売り上げの飛躍的拡大が期待できない」(御手洗氏)との判断から、「世界的な人口増による市場拡大を取り込み、成長を続ける」(同氏)と読んだ医療事業に本格参入することになりました。

 もっとも、キヤノンは1940年に国産初のレントゲン撮影用カメラを開発するなど、日本における医療機器産業の礎を築いてきた実績を持っています。しかしその後、医療機器メーカーとして大きなプレゼンスを持つには至りませんでした。今後の同社の舵取りに注目が集まります。

 そのキヤノンと、光超音波を活用した新たな診断技術の共同開発を進めているのが京都大学。アクセスランキング2位に入った「京大病院のICT改革(上):バイタル記録は『かざす』だけ」は、同大学医学部附属病院が看護師の業務効率改善のために導入した「バイタルデータターミナル」の詳細レポートです。

 このシステムは、元々は看護師の“フライトレコーダー”を作ろうというプロジェクト「E-ナイチンゲールプロジェクト」から発展したものだそう。フライトレコーダーが必要なのは、東芝の経営だったのかもしれません。