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 日経デジタルヘルスの読者の皆さま、こんにちわ。日経BPイノベーションICT研究所の井出と申します。今回は、医療・介護分野のサービス/ビジネスにも極めて関わりが深い「マイナンバー制度」に関する書籍について、本コラムを借りてご紹介させていただきます。

 通知カードがなかなか届かない、システム整備に絡んで厚生労働省職員が収賄容疑で逮捕された、個人番号カードの交付がシステム障害で滞ったなど、2015年秋以降、マイナンバー制度に関するよからぬニュースがメディアを騒がせています。電話や郵便でマイナンバーを聞き出そうとしたり、金銭をだまし取ろうとしたりするような詐欺事件の発生も続いています。

 マイナンバー制度は、日本国内に住民票がある1億2000万人以上もの人々に、12桁の数字からなる「マイナンバー(個人番号)」を割り当てる制度です。対象者が多いだけに、制度の安定運用と定着には、まだまだ時間がかかるでしょう。

 このマイナンバー制度、行政機関・自治体の情報システムの整備だけで約3000億円もの巨費を投じる一大国家プロジェクトでありながら、政府の広報・周知活動が行き届かず、制度を導入する意義やメリット、展開スケジュールへの理解は、いまだ浸透したとは言えない状況です。

 例えば医療・介護分野では、まずは健康保険給付や介護認定の申請などの手続きから導入され、その後、予防接種履歴の自治体間での情報共有や、メタボ健診情報(特定健診データ)の健康保険組合間での引き継ぎにも利用されることになっています。2018年4月をめどに、個人番号カードを医療保険のオンライン資格確認に利用できるようにして、健康保険証の代わりに使えるようにする準備も進められています。

 2016年に日経BP社が出版した書籍『新社会基盤 マイナンバーの全貌』は、制度の導入の意義やメリット、企業・組織が社会保障と税の手続きでマイナンバー制度に対応するための手順やノウハウの解説にとどまらず、今後の住民向けの各種行政サービス、さらには官民連携サービスや民間サービスとの関わり方まで、デジタル化する社会の基盤としての制度の役割を展望する内容になっています。

 医療・介護の分野では、各機関に勤務する看護師や介護士の異動が多いことから、現状では社会保険労務と税務での事務対応が煩雑になるとの嘆きも聞こえてきますが、今後は被保険者証、カルテ、レセプト(診療報酬明細)、処方箋、おくすり手帳、母子手帳などの電子化とも相まって、地域包括ケアやプライマリーケアなどのサービス品質の向上や費用の適正化、創薬のためのコホート研究の精緻化などに大いに寄与することになるはずです。

 書籍『新社会基盤 マイナンバーの全貌』は、マイナンバー制度を基盤とした「医療等ID」の意義や課題、医療分野の番号制度がもたらすメリットなどについて、医療情報システム開発センターの山本隆一理事長、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の近藤達也理事長、日本製薬団体連合会の野木森雅郁会長などに寄稿していただいたほか、中医協の前会長である森田朗国立社会保障・人口問題研究所 所長や、日本医療機器産業連合会の中尾浩治会長などによる医療情報化社会を展望する座談会も収録しています。

 マイナンバー制度が社会にもたらすインパクトを理解しておくために、ぜひご一読いただければ幸甚です。詳細はこちら

【書籍】
『新社会基盤 マイナンバーの全貌
   ~制度対応の勘所からビジネス・医療での活用まで』

市民が主役の地域情報化推進協議会 番号制度研究会 編
A5判・352ページ
価格:2,376円(税込み)
ISBN:978-4-8222-7168-8
発行元:日経BP社
発行日:2015/09/07

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