医療機器から‟未病機器”産業へ――。神奈川県が進める「ヘルスケア・ニューフロンティア構想」の中心テーマの一つだ(関連記事)。そして、時代の先端を行く「IoT(Internet of Things)」。ともに、最近ではお馴染みのキーワードである。これらの大きな流れは、国内の医療機器メーカーの志向性にも波及し始めている。

HOSPEXでの展示事例から

 「HOSPEX Japan 2016」は、2016年10月26~28日に東京ビッグサイトで開催された。医療/福祉設備機器展という呼称が示すとおり、医療と並んで、福祉介護あるいはヘルスケア用途など、本格的な医療機器とはやや距離をおく設備や機器類も並んでいる。さらには、健康機器と呼ばれるいわば非医療機器に属する機器群も多い。

 今注目の‟未病機器“というターム。医療機器メーカーもこの分野への展開を進めつつある。今回の展示会に出展していた日本精密測器(群馬県渋川市)は、血圧計やパルスオキシメータを主力製品とし、国内外でも高いシェアを持つ。歴史的には、監視カメラの部品であるアイリス(自動絞り装置)などの工業製品も手がけ、精密産業機器の製造に長けている。

 同社の展示で注目したのは、非接触型体温計「MT-500BT」だ。体温計自体は400年以上前からあり、今ではどこの家庭内にでも普及している。だが、普通は脇の下に入れて測定、というのが普遍の法則のようになっている。今回、日本精密測器が展示した体温計は、無線通信機能のBluetoothを搭載していることに加え、非接触の赤外線体温計であり、額での体温測定をわずか1秒で可能とする。

非接触型体温計「MT-500BT」の説明(日本精密測器の資料から)
非接触型体温計「MT-500BT」の説明(日本精密測器の資料から)
[画像のクリックで拡大表示]

 これまでの非侵襲・非接触タイプは、鼓膜温を測定する方式のものが出回っているが、いまひとつ、取り扱いの難しさから普及したとは言えない。高齢者や乳幼児にとっては「耳内に何を入れられているのか?」と嫌がるケースもあったからだ。

 これに対して、MT-500BTは額から約4cm以内に近づけて測定ボタンを押すだけで、体温測定を可能とした。意外に感じられるかもしれないが、体温測定という日常茶飯事的な行為が、不便で面倒と感じられながらも延々と継続していたわけだ。昔から「熱があるかどうか」を単純に見極めるのに、額に手をかざして判断してきた。それにもかかわらず、額で体温を自動測定できなかったのだ。額をはじめ皮膚温を非接触で測定できるこの新方式が市場でどう評価されるのか、期待が膨らむ新製品といえる。

 体温測定データは、Bluetooth機能を持った端末との接続が可能であり、アプリ側の「受信」モードでデータ転送日、転送時刻、体温、体温測定時の室温が転送・記録できる。なお、同社の血圧計「DS-S10」とパルスオキシメータ―「BO-750BT」についてもBluetoothを搭載している。

血圧計とパルスオキシメータもBluetoothを搭載している(日本精密測器の資料から)
血圧計とパルスオキシメータもBluetoothを搭載している(日本精密測器の資料から)
[画像のクリックで拡大表示]