「待望の答え」が得られるか

 具体例から出発する説明は、理解のしやすさとともに現実性が伴う。したがって、教科書という範疇でなく、真の開発手法を学べる実践書といったほうがよい。

 日本では「革新的医療機器が生まれにくい」という問題点が指摘されて久しい。その解決法は何なのか、業界全体としての長期テーマでもある。しかし本当にそうなのかどうかは、比較材料がない限り、何ともおぼろげな空論が展開され続けることになる。

 その意味でも、この書が「お手本」として役立つ。世界のリーダとしての米国の開発方法・方策と何か違いがあるのかどうか。

 「革新的な医療機器の開発」は、人材育成という側面からも大切な要件を含む。その観点からすれば、単に技術者だけが日常業務において意識すべきことだけを知ればよいという問題ではない。現時点において、医療機器産業の専業メーカー・非専業メーカーはもとより、規制側、コーディネータやコンサルタントなど幅広い関係者の関心を引きだす起爆剤になる。

 こうしたノウハウは、一朝一夕では得難いものである。それゆえに、その膨大な任務に対して、ボランティア的に関わった企画立案者と100名以上の翻訳者による努力が実を結んだ成果と受け止めている。こうした機会が与えられ、我が国の医療機器開発政策に役立つことを期待して、本書の出版に対して感謝の念も抱いている。

■変更履歴
記事初出時、2ページ目の冒頭で「ミネソタ大学」とあったのは「スタンフォード大学」でした。お詫びして訂正します。記事は修正済みです。