「独自性」や「革新性」は学べるものという思想

 スタンフォード大学で2001年から始まったプロジェクト的な教育課程が本書に凝縮されている。最大のポイントは何かと問われるなら、この解説書の基底を流れる「革新的医療機器の開発は学習できる」という基本思想だ。

 このことは、誰でもが理解しているつもりでも、改めて意識的に頭に叩き込んでおかないといけないことなのかもしれない。ともすると、「革新的な製品」や「新規技術」の開発は、独自性というイメージと直結しているため、「他から学習できる」とは思いにくい。一見ジレンマのように思えるが、実はそこに落とし穴があることも事実。真の発明は地道な学習から、ということになる。優れた医療機器は単純なひらめきからは生まれない、という示唆でもある。

 本書には、成功例としてのメデトロニクスの創始者バッケンとか、世界のトップメーカJ&Jの話などの実例が実に豊富だ。さらに、こうした一流企業だけでなく、ベンチャー企業での開発製品例がたくさん出てくる。しかも、それらの事例が単に偶発的なものでなく、本格的な戦略をベースにした地道な開発過程を踏んできたことも示されている。