日本医療機器学会の機関紙「医療機器学」の最新刊(2016年8月号)
日本医療機器学会の機関紙「医療機器学」の最新刊(2016年8月号)

 医療機器にロボット技術が投入され始めてから、すでにかなりの年月が費やされた。「da Vinci(ダヴィンチ)」に代表されるこれまでの手術支援ロボットなどを踏まえ、将来、ロボット技術やAI(人工知能)が医療とどうかかわっていくのか――。その動向について、日本医療機器学会の機関紙「医療機器学」の最新刊(2016年8月号)の特集「医療・介護分野で活躍するロボット技術」の項目から探ってみた。

医療機器に関わる国内外のロボット技術の実情

 この特集では、最新の国内外のロボット技術の事情が紹介されており、その応用範囲の広がりはAI適用も近いところまで来ているとの感触が得られる。

 医療機器とロボットを結び付けて考えるとき、まず脳裏を横切るのがダヴィンチだろう。とはいえ、その内容や実情が一般の医療関係者によく理解されているとも思えない。この特集では、まずは現況把握という観点からスタートし、現在抱える問題点とさらにその後に展開されるべき予測や期待までが記述されている。

 実際、ダヴィンチを最大限に活用している東京医科大学の大堀理氏が利用者としての立場から現状と将来への期待度を紹介している。おそらく、読者が医療機器の関係者であれば、その概要を理解するには十分と考えられる。

日本医療機器学会の機関紙「医療機器学」の最新刊(2016年8月号)の特集に記載されている項目の例(筆者が作成)
日本医療機器学会の機関紙「医療機器学」の最新刊(2016年8月号)の特集に記載されている項目の例(筆者が作成)
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 また、内視鏡ロボットの現況については、九州大学の橋詰誠氏らが他分野との連携の必要性という観点からの実情について述べている。

 もう一つ紹介されているのが、「iArmS」。術者を支援する手術時の手台で、デンソーと信州大学などが共同で開発したものだ(関連記事)

 これら3つの本格的な手術ロボットや手術支援に関する適用例に加え、介護やリハビリといった生活支援関連のロボット技術の解説が3テーマほど記述されている。本格的な医療だけでなく、こうした広義の医療・ヘルスケア分野にもロボット応用が展開されている実情が理解できる。