2017年8月15日、経済産業省は「先端医療機器(光線力学的治療機器)の安全性に関する国際規格発行」と題するニュースリリースを発行した。医療機器の承認審査の中では世界的にハードルが高いとされる光線力学的治療機器の安全性について、日本から提案した国際規格が発行されたという内容である。

 日本の医療機器産業界の現実は、心臓ペースメーカやコンタクトレンズをはじめとして、輸入超過/貿易赤字の状態が続いている。今回の日本発の国際標準規格の発行は、医療機器輸出拡大への起爆剤となるだろうか。

ネジから始まった国際標準規格化

 普段の生活環境のなかでは、IECやISOといった国際標準規格について身近に感じる機会が少ないかもしれない。だが、生活するにも仕事をするにもこれらの標準規格は必要不可欠だ。その一例として身近な問題を提示することから始めよう。

 古い話になるが、ネジ一つ取ってみても統一された規格がなかった。ネジは木工材の張り合わせや、機械器具の組み立てなど身の回りの製品のどこにでも使用されている便利な留め具だが、寸法やピッチなどまちまち、かつては日本でも多種類が出回っていた。

 初めて国際的に統一されたのが1965年、筆者が日本光電工業に入社した2年後のことだった。当時、「イソ(ISO)ネジ」に統一されるということで、社内でもその対応に大騒ぎをした記憶がある。最初は、ネジの天辺に小さな丸穴をあけ、それがイソネジの目印となっていた。その「共通で同一規格品を使用できる便利さ」ゆえに急速に普及したが、それ以前はネジの径やピッチなどが異なることで、自社製品間でさえ、共通して使用できないケースさえあった。

 イソネジはJISにも取り入れられ、世界規格から波及し日本国内にも共通化されていった経緯がある。これがそもそもISO国際規格の始まり。ただし、国際標準はISO(機械系)とIEC(電気電子系)に分かれている。医療機器の分野でいうと、麻酔器は当初は手動が主体、つまり機械が主体となっていたので、電気系が大幅に導入された現在でもISO規格側に残ったままとなっている。

 医療機器の世界でも標準化が進むことで、「バラツキ」の少ない医療機器が全世界に安全にかつ安定して提供されることになる。言語の分野で例えるなら、世界で共通して使用される「英語」のような役目もある。