2017年6月末に、『医療機器の薬事業務解説』(小泉和夫著、薬事日報社)が発刊された。類書の多いテーマながら、本書は規制者側からの視点で書かれていることが特色。かつての薬事法から現行の薬機法に至るまでの推移も読み取れ、医療機器業界に身を置く人にとっては、開発を含めた対応策へのガイドブックとして有用だ。

スタートアップから老舗まで

 著者の小泉氏は医療機器センターの専務理事などを歴任した人物で、医療機器をはじめとする薬事行政に精通している。これまでの類書の多くは、業界関係者、すなわち申請者サイドの目線で記述されていたため、「どうしたら法規制突破が可能なのか」という視点が主流となっていた。だが、本書は規制側・審査側からの単著という点がユニークで、それゆえにこの業界に身を置く人にとって教えられることが多々ある。

 筆者は本書のタイトルを見た瞬間、これまでの「薬事法規解説」と大差ない書籍だ、と予想した。しかし、読み進めるにつれ、その予想は覆された。業者サイドからすれば薬機法は「日々格闘を強いられている対象」という概念があるが、もしかしたら「協調路線が築けそう」という感覚が呼び起こされてきた。

 というのは、法律や規制というと何かと「難解」「厳格」「疎外感」といったイメージが付きまとう。ところが、本書の解説はごく平易な言葉で語られているため、法規制の本という威圧感がない。その分、誰でもが気楽に読めるという印象が強い。

 内容は業種別に章立てされていて、第一章が概論、次いで「製造」「製造販売」「販売・貸与」「修理」の各業種のための解説と、最後の参考資料からなる。それゆえに、開発、製造、販売、修理などを通して、また、経営者的な視点からも薬機法を俯瞰するのに最適だ。

 法規制は社内の薬事部だけの理解で十分という考え方が間違いだということに気づく。特に、法規制の精神というようなものを読み取れることが利点だろう。