血中酸素飽和度(SpO2)が90%を下回ると呼吸不全と判断されるレベル。上空1万mを飛行する旅客機内でパルスオキシメータを使ってみると、地上での値に比べ最大で10%低下する値を示した。JAL(日本航空)では、乗客の不測の事態に備え、呼吸・循環の状態が把握できるパルスオキシメータを2016年1月より国内線・国際線全機(他社運航コードシェア便を除く)に搭載している。
上空で血中酸素飽和度を実測
LCC(Low Cost Carrier)をはじめとする格安航空券などの普及により、誰もが気軽に海外旅行に行ける時代になった。今回、当社社員の海外出張に当たり、羽田を深夜に出発する国際線内で、血中酸素飽和度の測定を行わせてみた。測定には、日本精密測器製の携帯型パルスオキシメータを用いた。
搭乗前と飛行中に測定したところ、かなりの血中酸素飽和度の濃度の低下がみられた。機内では、高度上昇に伴い酸素濃度低下の影響を受けているからだ。
離陸直後の測定値は98%で、地上での測定値と変化はなかった。しかし、離陸1時間後の巡航高度においては、測定値が93%程度に低下した。さらにアルコール摂取、仮眠後の離陸5時間後の測定では、瞬時値として88%を示し、地上での測定に比べて約10%の酸素飽和度の低下を示した。これは評価値としての90%を切ったことを示し、呼吸不全と判断されるレベルに相当する。
また、アルコール摂取後にトイレに立ったときの心拍数が105bpsを示していたという。これは、体内に十分な酸素を供給するために心拍数を上昇させる補完機能の可能性もある。いずれにせよ、10%もの血中酸素飽飽和度の低下は、人体にとって同等の身体運動を行なうケースに例えられ、血流を増やすことで酸素を多く体内に供給し、不足した活動分を補う。
このような酸素量の低下や心拍数の上昇を見ると、急激な身体運動の変化による体調の異変リスクにもなりうる。身体的に心臓や肺に負担がかかるうえに、航空機の揺れにより驚くことで心拍数が上昇することもあり、さらには、エコノミークラス症候群による血栓症を誘発する危険性もある。誰もが足のむくみなど、明らかな体の変化を感じているはずだ。