心臓からの血液量をいかに簡単に、しかも非侵襲で測定するかというテーマは、医療機器業界での長年の懸案事項として研究されてきた。ところが、ここにきて実用的かつ有用な製品として市販化されたものが登場した。米Cheetah Medical社が開発した「Starling SV」である。業界の初期の目的に対して、かなり近いところまできたという印象を筆者は持つ。

「Starling SV」の外観
「Starling SV」の外観
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「心拍出量」は「血圧」以上の難題

 この製品は、「一回拍出量」や「心拍出量」の連続モニタリングが可能な点に特徴を有する。医学的には、心臓から拍出される血液量を一回拍出量(SV, Stroke Volume)といい、単位はmLで表わされる。この値に心拍数を掛け合せると、一分間に心臓から出る血液量となり、それを心拍出量(CV, Cardiac Volume)と呼ぶ。単位はL/分が使われ、血圧と並んで循環動態を見極める重要なパラメータである。

 技術的な表現を使うなら、血圧を電圧に、心拍出量を電流に置き換えてみれば理解しやすいだろう。電気技術でいうと、この積が電力となるが、心機能でいうと「心仕事量」という数値で、文字どおり心臓の活動を表している。心臓から出た血液が全て心臓まで戻るのにおおよそ1分かかるので、心拍出量の値が全血液量に相当すると考えられている。

 実は、厳密にいうと血圧の測定もかなりの難題を含んでいる。別な表現をするなら、現時点においても、非侵襲・連続的な測定について理想的な装置は存在しない。そうした現状において、非侵襲による心拍出量の実用化のニュースは、極めて画期的なものと受け止めている。

 これまではというと、カテーテルなどを使用して、直接心臓内にセンサーを挿入する方式などでしか正確な測定ができなかった。こうした実態を見るにつけ、生体情報モニタの世界において重要なパラメータの画期的な測定原理が導入されたといっていい。