医療機器に利用できる無線周波数帯については、何度となくこのコラムで取り上げてきた。2017年1月4日、総務省から「M2Mサービス等専用の電気通信番号」として「020」の電話番号帯が割り振られることが発表された。ものとものをつなぐM2M(エム・ツー・エム)、つまり機器同士が電話番号をもつ時代に移行し、電波利用から電話回線利用ができるようになる。

新設された「020」(図は著者が作成)
新設された「020」(図は著者が作成)
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従来と何が違うのか

 元来、医療用テレメータは無線周波数帯として「400MHz帯」の利用のみであった。しかも、決められた通信方式や微弱無線というような制約があり、さらに本体(医療機器)から単一方向に電波を発するのみで、相互の通信ができないなどの問題を引きずっていた。

 しかし、近年になって、その使用周波数帯が緩和される通達が配信され始めている(コラム1参照)。かつて、医療機器専用の周波数帯が割り当てられたのは、混信防止や電波の適正利用の目的で、約30年前に作られたものだ。ところがISM(Industry Science Medical)帯と呼ばれる、産業科学医療バンドが世界のグローバル化の中で発展し、Wi-FiやBluetoothに代表される2.4GHz帯なども国内外の医療機器で利用され始めた。

 医療機器でもIoT機器として相互の通信や、データ伝搬が用いられているのが現状だ(コラム2参照)。混信の対策としてスマートホッピングなど、空いている周波数帯を自身で探す機能についても以前のコラムで紹介した(コラム3参照)

 M2Mに用いられるのは、電話回線利用が想定される電波(700M~900MHz)。従来の医療機器に用いられている電波(400MHz帯)との違いは、その周波数帯と電波強度である。周波数が高いほどエネルギーが大きく、多くの情報を伝達することができる反面、遮蔽物の影響を受けやすくなる。PHSと携帯電話でも電波強度や通信範囲は異なり、使用方法により電波の届く範囲も異なってくる。「プラチナバンド」として話題となったのは800MHz帯であり、少ない基地局で広いエリアをカバーできるのが特徴であった。端末が基地局のアンテナにつながることで医療機器単体であっても、遠く離れたM2M機器などと自由な通信が可能となる。