川口 それは一番危険なことですね。若い人のやる気や好奇心を封じるようなことをしてしまうと、本当に終わってしまう。おじさんたちは、若者が世界に羽ばたけるようなプラットフォームをつくってきました。そのこと自体は自信を持っていいし、誇っていいと思います。だけど同時に、これだけ長い不況が続いているのは、我々おじさんたちの責任が大きいんですから、若者の挑戦を応援しないと。
アトキンソン 年寄りの年金を払うのは若者なのに、なぜその若者を愛でないのか不思議でしょうがない。
川口 その通り。私たちは、若者に食わせてもらわないといけないんだから。
日本は成熟した国といえるのか?
―― 今回の対談の冒頭で、川口さんは「日本は本当に成熟した国なんだろうか」というところから、『日本人も知らなかった日本の国力(ソフトパワー)』を執筆したと話していました。では最後に、「成熟した国のあり方とはどんなものなのか」を聞かせてもらえますか?
川口 繰り返しになってしまいますけど、上の世代は戦後の焼け野原から頑張って日本を復興させ、若者たちが世界に羽ばたけるだけのプラットフォームをつくってきました。そして実際に、若者たちは世界に飛び出している。上の世代が下の世代の礎になるということは、成熟した国の良いあり方だと思います。
ただし、せっかく礎を築くことに成功したのに、今、それが目的化している風潮がある。それではプラットフォームが無駄になってしまう。せっかくここまで頑張ってきたのだから、次はしっかりと回収できるような仕組みをつくらないと。それは、アトキンソンさんのような優秀な経営者たちがやってくれることだと思っていますけども。
アトキンソン 対談の始めにも言いましたけど、これまでの日本は無理にお金もうけをしなくてもよかった。しかし、止まってしまった経済は再び成長させなくてはいけません。そのためには、国の中身を変えていかなくてはならないんです。
国の中身を変える1つの方策として、上の世代は若い時に大きなチャンスをいただいて、今の時代では考えらえない早いうちに出世もできて、財産もできました。恩返しとして、早いうちに若者にバトンタッチしないといけません。我々のような年寄りはそろそろ隠居して、若い人に失敗と成功をするチャンスを与えて、盆栽いじりをすべきなのかなと思います。
(この項、終わり)