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HOME新産業異業種連携みらいのトビラ > 年寄りは、世界に飛び出す若者たちを愛でるべし

みらいのトビラ

年寄りは、世界に飛び出す若者たちを愛でるべし

川口盛之助×デービッド・アトキンソン:日本の「真の国力」とは(その3)

  • 構成:久我 智也
  • 2016/08/01 00:00
  • 1/4ページ
 日本のお国柄を定量分析した『日本人も知らなかった日本の国力(ソフトパワー)』(ディスカヴァー21)の著者である川口盛之助氏と、国宝や重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社 代表取締役社長のデービッド・アトキンソン氏による対談の最終回。2020年東京オリンピックを前にして、さまざまなメディアで日本を見つめ直す企画が増えている。その中での日本は、規律正しく、誠実で、優れた技術を持った国として紹介されている。しかし、世界から見た日本は、本当にそのような国なのか。2人の結論は、「日本の未来を悲観する必要なし」。ただ、大きな前提がある。それは…。
川口氏(左)とアトキンソン氏(写真:加藤 康)
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日本の未来は暗いのか?

―― 今、日本の未来を悲観する声が多くありますが、アトキンソンさんや川口さんはどう思っていますか?

アトキンソン 「日本の未来は暗い」とは全く思いません。私は1965年生まれですが、産業革命を最初に起こした英国は1970年代に入ってから経済が非常に低迷し、1979年までは真っ暗な時代でした。すごいと思っていた大英帝国は崩壊して、英国病と言われて世界からバカにされ、この国は終わりだと言われるようになっていたんです。国のすべてが否定されていました。

 例えば、私がオックスフォード大学に通っていた時代には、「オックスフォード大学は既得権益の塊のような学校で将来はない。あんなに腐っている大学はない」と言われていました。「入試や卒業までのプロセスがおかしい」「そもそも学生を選んでいる人がおかしい」「教育のやり方がおかしい」と散々否定されたんですよ。

 しかし、その後にサッチャー首相の改革の結果、英国経済が上向きになっていき、今どうなっているかといえば、オックスフォード大学は世界第2位の大学と評価されています。独特の教育制度は世界一だと。米国には勝てないかもしれないけれど、こんなに小さい国として第2位はすごいじゃないかと言われるようになりました。でも、実は12世紀に大学ができてから、教育制度を大きく変えたことはほとんどない。経済が悪くなったときには徹底的に叩かれ、経済が良くなると徹底的に褒められる。ここがポイントだと思います。

川口 英国がいわゆる「英国病」から持ち直したのは、金融(ファイナンス)分野の貢献がすごく大きいと思うんですが、日本が同じことをやろうとしてもダメですよね。

アトキンソン 金融の話は、ちょっと評価し過ぎなところはあると思いますが(笑)。「では、経済を立て直すために英国は何が変わったのか」というと、そんなに大きく変わってはいないんですよ。単に、自分たちなりの本当の目標や目的を見定めて、そのために何をすればいいのかということを突き詰めていくことで、経済を立て直したんです。

川口 日本は英国とは得意・不得意な分野が違う。じゃあ日本は何ができるのか、何を持っているのか。日本の得意分野にまずは気がつかなくてはならない。

アトキンソン そうです。日本は世界でもトップクラスの実力を持っているけれど、実績が伴っていない。そのギャップを埋めていくためには、きちんとした目的を設けて、それを徹底的に追求していく。日本にはポテンシャルがあるということは分かっているんですから、この2つができたら未来は暗いなんてことはないと思っています。

 これは1つの例なんですが、私が社長を務める小西美術工藝社は神社を補修する仕事が多いんです。補修する際には、もちろんすべての部分が大事なのですが、中でも1番大切な場所は、神社の「正面」です。そのうち神様がいらっしゃる場所が最も大事で、2番目は宮司がお祭りのときに座る場所です。3番目は貴賓として来た人が座ったときの目線にあるところが大事。

 でも、私が小西美術工藝社に入ったときに職人たちが一生懸命に仕上げていた場所は、例えば縁側の下の、さらに裏の方でした。もちろん、それ自体は悪いことではありません。問題は、1番大事な神様がいらっしゃる場所の仕上げが1番良かったわけではなかったことなんです。細部にこだわるのであれば、まずは1番大事な場所にこだわりましょうと。こだわりの精神を否定しているわけではなく、こだわる順番をきちんと決めていない。作業を始める前にきちんと優先順位を決めて、説明すれば、「ああ、そうか」と理解して、みんなが選択と集中を考えるようになる。そうした取り組みが、実力と実績のギャップを埋めることにつながると思います。

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