サミットに参加する世界の大国

 「伊勢志摩サミット」という国家的イベントが無事に終わりました。世界で最も影響力の大きい要人7人がひとところに集まるわけですから、その安全確保には途方もない予算と労力を必要とすることが良く分かりました。サミットの成果やら、その意義、莫大なコストを掛けた対価などの話などはさておいて、本稿では世界に7カ国(日本、米国、英国、イタリア、カナダ、ドイツ、フランス)しかないサミット参加国という肩書きの価値について考えたいと思います。

 先進国首脳会議とか主要国首脳会議と呼ばれるサミットでは、1975年の創設当初、G5(日本、米国、英国、ドイツ、フランス)だった頃から我が国はメンバーとしてお呼ばれしている「特に主要な」古参会員です。普段は当たり前のように聞き流しているこの肩書きですが、簡単に手に入れることはできないプレミアムな称号です。まだ入れてもらえない新参の中国などは「G7とは時代遅れの金持ちクラブだ」「今年(2016年)の9月に中国で開催されるG20こそが時代の潮流だ」などと声を大にしています。Jリーグのように入れ替え戦があったなら、日本ものんびりとはしていられないかもしれません。

図1 各国の経済規模と富裕度(筆者作成)
図1 各国の経済規模と富裕度(筆者作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 金持ちクラブというのなら、産油国やタックスヘイブンの金融国家など、国民の富裕度ではもっと上位の国々はたくさんあります。逆に国の規模で序列を決めるのならロシアや中国などの大国が上位に並ぶはずです。このあたりのバランスを絵にしたのが図1です。横軸にはGDP(国民総生産)の多い国から順位で並べており、縦軸には1人当たりのGDPの大きさを上から順に示した図です。右下には人口大国の中国やインドがプロットされ、逆の左上にはカタールやノルウェーといった産油国、シンガポールなどの金融系の富裕国が配される形となっています。

 サミットメンバー(創設当初のG5と現在のG7)に加えて、G10とG20、BRICsの該当国をそれぞれ色分けして示しました。G20とは先進国から成るG7に対して、存在感を増してきた新興諸国12カ国を含めた枠組みです*1。足して19ですがEU(欧州連合)代表が入るのでG20になります。その中の筆頭格がブラジル、ロシア、インド、中国のBRICs4か国という位置付けになります。

 一方でG10とは、先進11カ国財務大臣・中央銀行総裁会議に参加する国々で、G7に4カ国(オランダ、ベルギー、スウェーデン、スイス)を加えた11カ国から成り立っています*2(11か国に増えたのになぜかG10のままです)。こちらは、金融界で歴史と実績を持つ欧州の古豪富裕国の4カ国が選ばれています。

 図1を見ると各集団の位置関係がクリアに分かるでしょう。最も右上にいるG7メンバーからみると、量を重視するならBRICsの4大国、質を重視するならG10メンバーの4カ国が後を追う格好になっています。その中間にいるのが新興国G20メンバーです。G7に追加メンバーを考えるとしたら、この図を見る限りは韓国とオーストラリアが最右翼ということになります。ちなみにG7の会議にはEUの欧州理事会議長と欧州委員会委員長も入ります。

 この経済指標から見た質と量の2軸展開では、日本の位置付けとは世界各国の平均ラインよりは若干下側ではあるものの、堂々と世界の右上位5カ国に入るボードメンバーといってよさそうです。

*1 G20は、G7の国とEU、ロシア、中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、オーストラリア、韓国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチン。
*2 G10は、IMF(国際通貨基金)加盟主要11カ国の財務大臣と中央銀行総裁による経済会議に参加する国のグループ。1962年にIMFの一般借入取極(GAB)への参加に同意した10カ国で始まり、1984年にスイスが加わった。