人気者や人徳者という感情の視点

 マクロ経済指標だけで分析した図1と、少し性格を加味した図2を用いて、各国の位置付けを展開してみました。いずれの視点で見ても、日本はG7としての堂々の実力を持ち合わせていると自信を持ってよさそうな結果となりましたが、私には今一つしっくりこない不安感が残りました。

 世界の皆さんにとって、我が国は世界の5大老という上席を務めるに見合うだけの人望や存在感を本当に有しているのでしょうか? 小市民な、いち日本人としては、世界の皆様からの気持ち面での評価が気になるのです。ロジックだけではなく、エモーショナルな視点での世界からの敬意というものを、何らかの指標で数値化して示してもらえれば安心できるのになあと思うわけです。

 この文脈は、10年ほど前に話題となった「クールジャパン」とか「グロス・ナショナル・クール」というワードに通じる話でもあります。米ハーバード大学のジョゼフ・ナイ教授がソフトパワーという概念を打ち出し、英国がクール・ブリタニア政策を推し進めた1990年代に源流をたどる話です。

 使い古された感のある「クールジャパン」ですが、近年の観光客の急増によるインバウンド需要や、日本食の世界的な広がりなどを受けて、再び日本のソフトコンテンツ見直し論がかまびすしくなっています。テレビ番組や雑誌の企画でも、日本の習慣や商品・サービス類のユニークさや奥深さについて語られるシーンが目に見えて増えてきました。

 以前は「ここがヘンだよ日本の××」的に上から目線の外国人が批評する企画が多かったのですが、最近では逆に日本礼賛的なコンテンツが目白押しです。この種の企画ではさまざまな面白ネタが棚卸しされ、その歴史的背景や、関わる人々の深い思い入れなどが紹介されます。時には海外のプロフェッショナルが招かれて、日本のサービスとの違いを目の当たりにして「やはり日本のやり方はすごいですねえ」と感嘆してくれたりもします。

 悪い気はしませんし、勉強になる企画も多いのですが、課題としては定量的な評価指標にならない点が挙げられます。理想的にはGDPとか人間開発指数などのように、何らかの指標化することができれば、日本のクールさの度合いがどの程度評価されてきたのかを実感できるのですが、感動力を数値化することは容易ではありません。