ソフトパワーとハードパワー

 先ほどの図1は、経済指標だけを鑑みた「量の横軸」と「質の縦軸」というニュアンスでのプロットでしたが、この縦横軸にもう少しお国柄のイメージが湧きやすい評価指数を持ち込んで再定義すると図2のようになります。

図2 各国のソフトパワーとハードパワー(筆者作成)
図2 各国のソフトパワーとハードパワー(筆者作成)
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 ここでは横軸に軍事力の世界順位をとり、縦軸は人間開発指数の国別ランキングを表しています。各国の軍事力(軍事分析サイトの「Global Firepower」が公表した2016年版世界の軍事力ランキング)は、国の経済規模を示すGDPと概ね比例する相関関係があります。概して大規模な国ほど軍隊も強いということです。

 一方、裕福な国では、「より人間を尊重した社会環境が提供されるであろう」という意味において、「人間開発力指数:HDI」が高くなることも分かっています。人間開発力指数とは平均余命や識字率、就学率、購買力などを盛り込んで算出した社会の成熟度を示す指数で、国連開発計画(UNDP)が発表しているものです。福祉環境の充実した国ほど高い順位となるように設計されています。

 これら人間開発指数ランクと軍事力ランクを縦横軸にとって各国をプロットした図2とは、換言すると「ソフトパワーとハードパワーのバランスチャート」ともいえるでしょう。右下ほどジャイアンのような剛腕系のボスキャラであり、左上はお上品なしずかちゃん系というイメージでしょうか。前の図1と比べて各国の位置付けはさらに強調されて分かりやすくなっています。

 どちらの図を見ても米国は群を抜いて強力な世界のワントップリーダーです。これに続く存在としてはハードパワー専門ならロシアや中国がボスの座を狙っており、逆にソフト系のブランドだとスイスやオランダなどのプレゼンスが高まってきます。日本は図2で見てもバランスよく世界の5大老の位置付けにあると言ってよさそうです。